日本映画界を代表する脚本家・荒井晴彦が監督を務めた、綾野 剛主演最新作の映画『星と月は天の穴』が、12 月 19 日(金)よりテアトル新宿他にて全国ロードショー。
●「ここまでやってくれるとは思わなかった」荒井晴彦監督も絶賛!田中麗奈が切り開く新境地
1998 年の映画『がんばっていきまっしょい』(磯村一路監督)で主演を飾り数々の映画賞を受賞、爽やかで快活なイメージが鮮烈で、いまだに印象深い人も多いかもしれない。その後も『はつ恋』(2000/篠原哲雄監督)、『東京マリーゴールド』(2001/市川準監督)、『犬と私の 10 の約束』(2008/本木克英監督)など現在に至るまで毎年出演作はほぼ途切れることなく、映画にドラマにと長年に渡り活躍を続ける稀有な存在だ。
そして、最近の田中麗奈の演じる役柄は、かつてのイメージを一新するかのような、重厚感すらも漂うものにシフトしつつある。今年は、立て続けに映画 5 本に出演。戦後 80 年の今夏に公開した史実に基づく物語『雪風YUKIKAZE』(山田敏久監督)では、竹ノ内豊演じる艦長・寺澤一利の妻志津役を凛とした姿で演じ切り、『ストロベリームーン 余命半年の恋』(公開中/酒井麻衣監督)では余命半年の娘を持つ母親・ 美代子を好演、娘を想い涙するシーンは、観るものすべての心を震わせた。さらには、先だって開催された第38 回東京国際映画祭にも出品された『ナイトフラワー』(11 月公開/内田英治監督)では総合病院の院長夫人・星崎みゆき役を務め、時代、立場、背負っているものすべてが違う女性を見事に体現、そして、『星と月は天の穴』では、これまで見せたことのない表情や佇まいを見せている。
本作で田中が演じるのは、綾野剛演じる主人公・矢添の馴染みの娼婦・千枝子。矢添を憎からず思っており、彼に対し他の客以上の“情”はある。しかし関係は進展することなく、時だけが流れ、女として自身の人生の選択をする時であることを自覚している女性だ。
愛をこじらせている矢添に決して踏み込むことなく淡々と寄り添う一方で、矢添の一番の理解者であることも見受けられる。さらには、己の幸せのために大きな決断を下していく千枝子の姿は切なくも軽やかで、咲耶演じる紀子とある種対照的な人物像となっている。ままならなさ、どうしようもなさを抱える心の内を全て言葉にはしない。しかし、それが全身から溢れ出る色香となって、役柄への説得力が増している。田中自身も「今でも千枝子を思うと胸がキュッとします」と語る通り、千枝子が持つ矢添へのある種の愛と諦念、複雑な女心の内が物語に与える影響は大きく、娼婦という役柄ながら、少なからず人間の共感を呼ぶことだろう。
田中麗奈と荒井晴彦の出会いは 2017 年、三島有紀子監督による『幼な子われらに生まれ』。荒井が脚本を務めた同作で田中は浅野忠信とともにバツイチ同士で結婚した夫婦を演じ、血のつながらない家族に対する葛藤、再生を描いたこの作品で第 91 回キネマ旬報ベスト・テン 助演女優賞、第 72 回毎日映画コンクール 女優助演賞ほか、作品としても第 41 回モントリオール世界映画祭審査員特別大賞など数々の賞に輝いた。
次いで、荒井が脚本を務めた『福田村事件』(2023 年/森達也監督)で再び邂逅。田中は、荒井が監督を務めた『火口のふたり』(2019)『花腐し』(2023)にも惹かれていたとコメントしており、今回の作品の出演には「お話をいただいた時はびっくりしましたが、お声がけいただき大変嬉しかったです」と語っている。一方荒井も「まさか出演してくれるとは思わなかった」と田中の参加に望外の喜び、さらには「ここまでやってくれるとは思わなかった」と期待を大きく上回る田中の演技に感嘆の声を寄せている。制作陣を唸らせたという、公園のブランコのシーンは必見。
10 代での鮮烈なデビューから 20 年以上の時を経て、スクリーンに圧倒的な存在感を刻む、日本映画界にはなくてならない俳優となった。今後も、田中麗奈が切り開いていく新境地から目が離せない。
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『星と月は天の穴』12月19日(金)テアトル新宿ほか全国ロードショー
配給:ハピネットファントム・スタジオ ©️ 2025「星と月は天の穴」製作委員会





