カンヌ・ヴェネチア・ベルリン3大映画祭を制し、カンヌ国際映画祭コンペティション部門に8作品連続選出されている『ローマ法王の休日』のナンニ・モレッティ監督最新作『チネチッタで会いましょう』が、11 月 22 日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開となります。本作ではナンニ・モレッティ監督の過去作へのオマージュが満載。そこで、見逃せない注目ポイントを解説します!
早熟の異才ナンニ・モレッティ監督 50 年のキャリアの集大成となる最新作は、時代の変化についていけず、真ん中にいると思っていたらはみ出してしまっていた映画監督が、失意の後に大切なことに気づくというヒューマンドラマ。フェリーニやキェシロフスキ、スコセッシなど映画へのオマージュを交えながらところどころに自身の過去作品を引用して、変化の激しい世界に適応することの難しさをユーモラスに描きだす。人生を肯定し生きる元気を与えてくれると絶賛されイタリアで大ヒットを記録。終始笑えるコメディタッチでありながらも、作家性と娯楽性とを見事に両立し、独特のユーモアとやさしい眼差しが観客の心を掴む、モレッティ作品の魅力が満喫できる作品に仕上がっている。
モレッティ自身が、製作・脚本・出演も兼ね、共演にはモレッティ作品の常連マルゲリータ・ブイや、俳優であり監督のマチュー・アマルリックなどが脇を固める。撮影は 90 年余の歴史を持つヨーロッパ最大の撮影スタジオであるチネチッタ撮影所で行われ、音楽はフェリーニの音楽を手がけていたニーノ・ロータの弟子フランコ・ピエルサンティが担当し、ポップミュージックを効果的に使っている。
■過去作へのオマージュが満載!見逃せない注目ポイント
『チネチッタで会いましょう』序盤のシーンで、ジョヴァンニが製作する映画に出演する女優は、ジョヴァンニが嫌うミュールを履いて現場にきて指摘される。「ミュールで現場に入るのも固く禁じる」、「足の前方を覆うなら後方も覆うべきだ。爪先が見えない以上、かかとも見たくない」、「ミュールはスリッパと同様、単なる靴ではない。世界観の問題なんだ。じつに悲劇的な世界観だよ」とジョヴァンニは力説するのだが、ここまでミュールについて言及するのはなぜだろうか。答えは 1984 年のナンニ・モレッティ監督映画『僕のビアンカ』に登場する高校教師ミケーレのセリフにあった。ミケーレは「どんな靴を履くかで歩き方が決まる。どんな歩き方をするかで世界は変わって見える」と発言する。ミケーレはジョヴァンニと同じくスリッパを嫌う。靴を見れば人間がわかる、どんな靴を選ぶかで人間が決まると考えているのだ。こんな些細なシーンにもモレッティの過去作へのオマージュは隠されている。その他にも、本作の中にはモレッティ作品によく登場するイタリア共産党、精神分析医、水泳、ソファとブランケットといったモチーフも登場しオマージュが満載。さらに、ラストシーンではモレッティ作品を観たことのある人だったら思わず嬉しくなる仕掛けも...。
モレッティ監督が自身のキャリアの第一段階の集大成の作品だという『チネチッタで会いましょう』は、11 月 22 日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開。
<STORY>
痛い目にあって初めて気づく大切なこと
5 年に 1 度新作を撮り続けてきた映画監督ジョヴァンニ。傍にはプロデューサーでもある妻がいつもいてくれた。頭の中は新作のアイディアでいっぱいだ。完璧に見えた彼の人生。ところが自分は世間からも家族の気持ちからもズレていたことに、容赦なく気付かされる出来事に見舞われる。妻には突然別れを切り出され、フランス人のプロデューサーは詐欺師とわかり映画製作は中断される。しまいには妻のプロデュースする映画に難癖をつけ撮影を一晩とめてしまう。Netflix を頼ってはみたものの脚本にダメ出しされる。窮地に陥った彼が失意の中で見つけた大切なものとは?
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