フランスの都市カンヌで開かれている世界で最も有名な国際映画祭の一つ第75回カンヌ国際映画祭。栄えあるパルムドール賞を受賞したのは『フレンチアルプスで起きたこと』や『ザ・スクエア 思いやりの聖域』のリューベン・オストルンド監督の最新作「Triangle of Sadness(原題)」!グランプリを受賞したのは「Girl/ガール」のルーカス・ドン監督作品「Close(原題)」と、「ハイ・ライフ」のクレール・ドゥニ監督作品「Stars at Noon(原題)」。
日本からはコンペティション部門に是枝裕和監督の『ベイビー・ブローカー』、ある視点部門に早川千絵監督の『PLAN 75』が選出。
公式上映では、今回の映画祭出品作史上最長の12分にわたるスタンディングオベーションがおこり、割れんばかりの拍手喝采で観客を魅了、会場全体が感動に包まれ、受賞への期待が高まっていた『ベイビー・ブローカー』。最優秀男優賞に主演ソン・ガンホが見事選出され、また独立賞のエキュメニカル審査員賞を受賞しました。カンヌ国際映画祭において、韓国人俳優が「最優秀男優賞」を受賞するのは初となる快挙となります!
是枝裕和監督らと熱い抱擁を交わした後、壇上へ上がったソン・ガンホは「本当に有難うございます。光栄です。偉大なる芸術家、是枝裕和監督に深く感謝申し上げます。一緒に頑張ってくれた役者のカン・ドンウォンさん、イ・ジウンさん、イ・ジュヨンさん、ペ・ドゥナさんに深い感謝と、この光栄を分かち合いたいと思います。イ・ユジン代表、そしてCJの関係者の方にも本当に感謝しています。今、2階にいると思いますが、愛する家族と共に来ました。本当に大きなプレゼントになりました。とても嬉しいですし、このトロフィーの光栄と永遠なる愛を差し上げます。多くの映画ファンにこの栄光を差し上げます。」と目を潤ませながら喜びのスピーチをしました。
「エキュメニカル審査員賞」受賞にあたり、審査員長は作品について「この映画は、血のつながりがなくても家族が存在できることをとても親密な方法で示してくれる。傷ついてきた過去を持つ大人3人(ブローカーの男2人とベイビー・ボックスに赤ん坊を置いた母親1人)と養護施設から抜け出した子供1人によって、赤ん坊の命と魂は守られる」と評価し、さらに本編後半に登場する彼らによるあるシーンがとても感動的だったことについて触れた。それを受け、是枝監督は「有難うございます。今僕が言うことは何もないと思うくらい、僕がこの映画でやりたかったことを伝えていただいたので、短く感謝の言葉を述べて終わりにしたいと思います。映画の冒頭で捨てられた赤ちゃんと捨てた母親が、子供を売ろうとする男たちと旅に出るという話が、映画の最後間近で、彼ら全員が生まれてきたことを祝福されます。これは今回映画を作る上で施設で育った子や親元を離れて育った子たちを取材する中で、自分が社会の側、大人の側としてどうしても伝えたい言葉だったので、普段はやらないくらいはっきりとセリフにしました。その祝福の言葉を聞いた後にちょっとだけ人生が上向きになる、上を向いて生きていけるようになるというか、そんな物語にしたいなと思いました。最終的には捨てられたひとつの命がもう少し大きな、それは側でみている人もいれば、側に近寄れないので遠巻きにみている人もいるけれども、社会という少し大きな箱の中で見つめられて育てられていくという、そういう話にしました。なので、今回は本当にこの作品にとってふさわしい賞をいただけたなと思っています。有難うございます。」と受賞の喜びと共に作品についてコメントしました。
早川千絵監督の『PLAN 75』はカメラドール スペシャル・メンション受賞を受賞!司会者から名前を呼ばれた早川監督は緊張の面持ちで舞台に上がると、まず「メルシーボークー」とフランス語で挨拶をし、「誰にとっても最初の一本目というのは思入れが深く、特別なものだと思うのですが、私にとっての特別で大切な一本目の映画をカンヌに呼んでいただき、評価してくださって本当にありがとうございます」と感謝の言葉を伝えました。
日本で受賞の一報を受けた倍賞千恵子からは「この作品で「生きるということ」を優しく、力強く撮影していた日々が、昨日のことのように熱く蘇ってきました。サァーこれからもどんどん映画作ってくださいね。本当におめでとうございます」と祝福のコメントが届いた。また、公式上映に参加した磯村勇斗は「受賞を聞いて、心が喜びで波打っています。監督に現場で寄り添っていただいた日々が恋しいです」と振り返りました。
<早川監督 コメント全文>
全ての映画監督に、最初に撮る1本目の映画があります。誰にとっても最初の一本というのは思い入れが深く、特別なものだと思うのですが、私にとって、とても特別で大切な1本目の映画を、カンヌに呼んでくださり、評価をしてくださって本当にありがとうございます。『PLAN 75』という映画は、今を生きる私たちにとって必要な映画だと言ってくださった方がいました。その言葉が深く心に残っています。
この映画の立ち上げからずっと一緒にこの作品を育ててくれた、プロデューサーの水野詠子さん、ジェイソングレイさん、フランス、フィリピン、日本のチーム、この作品に関わってくれた全ての人に感謝しています。そして、ミチという主人公に命を吹き込んでくださった倍賞千恵子さんに日本に帰ったら真っ先に報告したいと思います。
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映画『ベイビー・ブローカー』
6月24日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー 配給:ギャガ
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映画『PLAN 75』
6月17日(金)より、新宿ピカデリーほか全国公開 配給:ハピネットファントム・スタジオ
©2022『PLAN 75』製作委員会/Urban Factory/Fusee
(C) Kazuko WAKAYAMA