映画音響の歴史を網羅したドキュメンタリー映画『ようこそ映画音響の世界へ』が8月28日(金)より新宿シネマカリテほか全国順次公開。
映画音響と一言でいっても、その中身は広く、登場人物の声はもちろん、環境音や効果音、音楽など、映画における“音”の全てを指す。本作は、世界的に活躍する映画監督たちや、『スター・ウォーズ』(77)などを手掛けたベン・バート、『地獄の黙示録』(79)などで知られるウォルター・マーチ、『ジュラシック・パーク』(93)などに携わったゲイリー・ライドストロームといった映画音響界のレジェンドを始めとした、その道のスペシャリストたちへのインタビューと共に、“音”が映画にもたらす効果と重要性に迫っていく感動と興奮のドキュメンタリーだ。
映画制作の現場において長い間“音響”は重要視されず、制作期間や資金面は決して恵まれたものではなかった。名作の裏側で人知れず努力を続けた音響技術者たちの活躍と、“音”の秘密を知ることが出来る本作。この度解禁となるのは続編の公開も予定されている、トム・クルーズの出世作『トップガン』(86)の音響制作の裏側と、知られざる音響技術者の苦労に迫る本編映像。『トップガン』で音響制作を担当したのは、女性スタッフがまだまだ少なかった 1980年代から『フラッシュダンス』(83)や『ビバリーヒルズ・コップ』(84)などの作品で活躍していたセス・ホール。彼女はリアルな音を求めてジェット機の音を録音し使用することにするが、本物の音は彼女の想像より退屈で迫力に欠けるものだった。理想の音を観客に届けるため試行錯誤の日々を過ごすセス。細かな調整や工夫には多くの時間が必要となるが、その重要性はスタジオには中々理解してもらうことができない。ある日作業に励む彼女にスタジオの重役から“音は重要じゃない”と突然解雇が言い渡されたのだ。非情な言葉を投げられるが、臨場感のある“音”を追い求めた彼女の努力は素晴らしい結果となり報われる。解雇を言い渡された数か月後、アカデミー賞の音響効果部門にノミネートされたのだ。一体どのような工夫がアカデミー賞ノミネートという素晴らしい結果に結びついたのか。録音したジェット機のエンジン音をそのまま使用するだけでは、迫力のある音は生まれない。そこで大胆にもある動物の声を重ねることに。ライオンやトラの猛々しい咆哮、猿のキーキーとした鳴き声を重ねることで退屈なエンジン音ではなく、鋭く激しい迫力のある戦闘機の爆音を再現し、観客に強烈な印象を残すことに成功する。映像では彼女の工夫が施された、戦闘機の爆音を体感することが出来るのでぜひご覧頂きたい。名作の裏側には彼女のように様々な逆境を跳ね除け、人知れず努力を続けた技術者たちの姿がある。映画制作はチームワークによって成り立ち、なかでも大きな側面を担っているのは音響であることを、本作を観ることで実感できるはずだ。
映画音響の進化において大きな偉業を残した『キング・コング('33)』『市民ケーン』『鳥(’63)』『ゴッドファーザー』(72)から近年の話題作『ワンダーウーマン』(17)や『ROMA/ローマ』(18)など名作映画の映像をふんだんに使った、映画愛、仕事愛に包まれた感動と興奮の映画音響ドキュメンタリー『ようこそ映画音響の世界へ』は、8 月 28 日(金)より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷、立川シネマシティほか全国順次公開。
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