「ダ・ヴィンチ・コード」シリーズ出版秘話に基づく本格ミステリー映画『9 人の翻訳家 囚われたベストセラー』大ヒット公開中。トム・ハンクス主演で映画化もされ、「ダ・ヴィンチ・コード」などが一大現象を巻き起こした人気小説「ロバート・ラングドン」シリーズ。その 4作目「インフェルノ」出版時驚くべきミッションが遂行された。なんと、海賊行為と違法流出を恐れた出版元が、著者ダン・ブラウンの同意のもと、各国の翻訳家たちを秘密の地下室に隔離して翻訳を行ったのだ。イギリスでもっとも歴史あるタブロイド紙デイリーメールによって報じられることとなった、この前代未聞のエピソードを元に、デジタル時代ならではの仕掛けをちりばめた本格ミステリー映画が誕生!物語の舞台はフランスの人里離れた村にある洋館。全世界待望のミステリー小説「デダリュス」完結編の世界同時出版のため、その洋館の地下に隠された要塞のごとき密室に、9 カ国の翻訳家が集められた。彼らは、外出はおろか SNS や電話などの通信も禁止され、毎日 20 ページずつだけ渡される原稿を翻訳していく。ところがある夜、出版社社長の元に「冒頭 10 ページをネットに公開した。24 時間以内に 500 万ユーロを支払わなければ、次の 100 ページも公開する。要求を拒めば、全ページを流出させる」という脅迫メールが届くのだが...。
この度、本作の公開を記念してトークイベント付き上映会を実施。“翻訳家の監禁”という、映画の基となった「ダ・ヴィンチ・コード」出版秘話とも密接に関わりがあり、実際に「ダ・ヴィンチ・コード」、「インフェルノ」の日本語翻訳を手掛けた文芸翻訳者の越前敏弥氏と本作の日本語字幕を担当した原田りえ氏をお招きし、翻訳家の監禁に関するまさかの裏話や、“翻訳のプロ”から観た本作の見どころをたっぷりとトークしました。
温かい拍手に迎えられ、場内に登場した越前氏と原田氏。「もう 4 回も観ているけど、何度観ても発見があったり、逆にこうだと思っていたことがまた分からなくなったり、『007』シリーズにも出演しているオルガ・キュリレンコが、3桁の暗証番号を予想するときに“007”と発言したりと、小ネタも満載の面白い映画です。」と本作を観た感想を語
る越前氏。原田氏も「字幕をつけるために何十回と観直しましたが、先生と同じく、その度に新しい発見がある作品でした。静と動の対比が素晴らしくて、リズムも良いですよね。」と本作を絶賛。原田氏は英語・フランス語・ポルトガル語・スペイン語の 4 カ国語を操って字幕制作をされていて、まさに本作にうってつけの翻訳家。とはいえ、多言語を扱う翻訳を 10 年以上続けている彼女でも、この映画ほど言語が飛び交う作品には出会ったことが無かったそうで、「これまでで最多言語を記録しました。(笑)」と苦笑しながら告白。場内にも笑いが起きる中、越前氏から「言語を分ける字幕の記号もユニークでしたね。」と聞かれると「この言語には<>の記号、この言語には《》の記号、というように使い分けていました。字幕は原文のすべてを訳出できるわけではないので、何を活かして何を諦めるか、相談しながら何度も試行錯誤を繰り返しました。」と9人の翻訳家たちを主人公に据えた作品ならではの苦労があったとか。
さらに、本作は「インフェルノ」出版時の実話がベースになっている映画ということで、実際に「インフェルノ」日本語翻訳を担当した越前氏に当時のお話しをお伺いすると、「僕も怖い思いをしそうになったんです。(笑)」と一言。なんと、越前氏の元にも“監禁”のオファーがきていたのだとか...!「ただ、僕の場合は日本の出版社が毅然とした態度で断ってくださったので、実際に監禁にまでは至りませんでしたが...ヨーロッパ圏の翻訳家6人が、出版社の地下に監禁されたそうです。」とまさに当事者からのエピソードが飛び出し、場内も驚いた様子。「実際はここまで厳重ではなかったようだし、食事は出版社の食堂だったらしいから、映画に出てくるほど豪華な食事ではなかったみたいだけど(笑)。」と冗談も交えて驚きのエピソードを明かし、会場を沸かせていました。
越前氏と原田氏の2人が口を揃えて共感できる、と話したのが、劇中、監禁された翻訳家の1人が口にする“1人じゃないと訳せない”というセリフ。原田氏は「その気持ち、すごく分かります。いつも1人で自由に作業しているので、劇中のプレッシャーの中では翻訳なんてできないと思う...」と明かすと、越前氏も「僕もこの状況ではできないな。」とポツリ。本作で描かれる“監禁”という状況が、翻訳家にとってどれだけ異例の出来事であるのかが分かる、“翻訳者”ならではの貴重な本音トークも。
最後には「これまで多くのミステリー作品を訳してきたけど、この映画は細かい所まで含めて、隅々まですごい映画です。ミステリーの手法を語りたくなる映画でもあります。何度でも、観て欲しいですね。」と越前さん。原田さんも「色々な見方ができる作品だと思います。友達と語りあったり、1人で好きなシーンを振り返ったり、ぜひまた観にきてください。」とそれぞれが映画を PR し、トークイベントは幕を閉じました。
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