佐藤二朗が主宰する演劇ユニット【ちからわざ】で 2009 年に初演、2014 年に再演された舞台「はるヲうるひと」を、鬼才俳優・佐藤二朗が原作・脚本・監督を手掛け映画化。主演に山田孝之を迎え、その他にも仲里依紗、向井理、坂井真紀ら豪華キャスト陣が集結し、映画化を望んでいた佐藤二朗が約5年を掛けて完成させました。その「はるヲうるひと」が第35回ワルシャワ映画祭の 1-2 コンペティション部門(長編監督2作目までの部門)に正式出品作品として上映され、監督自ら上映劇場に赴き舞台挨拶を行いました。
35年の歴史を誇るワルシャワ映画祭は 1985 年に始まり、2009 年に国際映画製作者連盟公認の映画祭となって、カンヌ、ベルリン、ヴェネチア、ロカルノ、サン・セバスティアンなどと並びヨーロッパの中でも重要な映画祭の一つとして知られている。映画芸術科学アカデミー公認の映画祭でもある。そして、国際コンペティション部門や1-2 コンペティション部門(長編監督2作目までの部門・本作はこちらの部門に正式出品)の他にも、フリースピリッツ長編部門(インディペンデント、革新的、野心的な作品対象)など合計6部門に分かれている他、特別上映作品枠などもある。映画祭期間中に上映される作品総数は 120 作品以上。動員数はのべ7万人ほどの規模を有する。映画祭の本拠点は、ワルシャワ市街のランドマークである文化科学宮殿内にあるキノテカ劇場と、ズウォテ タラスィショッピングモール内にあるシネコン・Multikino の二つの劇場で上映が行われる。
佐藤二朗監督が登壇したのは、現地時間 2019 年 10 月 16 日の夜に行われた上映で、250席あるスクリーンで231名の動員で客層も幅広く20代から50代の男女が中心。親日国としても有名なポーランドとあってか上映前から多くの観客が興味を感じている様子。そして、本編がはじまると、シリアスなシーンとコミカルなシーンが織りなす作品である為、所々に自然と笑いが起き、素直に作品を楽しんでいるようであった。上映後は佐藤二朗監督が登壇。観客の前で挨拶を済ませた後、「私は哲雄という役を本作で演じていますが、あんなに酷い男ではありません(笑)。日本ではコメディー作品に出演する事が多いですが、俳優というのは世界共通だと思いますが、自分が持たれているイメージを覆したいと思っています。」また、「日本では来年公開なのですが、日本の皆さんをあっと言わせたいと思ってこういう役を書きました。」と佐藤監督。多くの観客が熱心に監督の言葉に耳を傾けている中、ポーランド人の観客の一人は「映画にとても感動して、凄く気に入りました。今までのワルシャワ映画祭の作品の中でも、今年上映されている作品の中でも、こんなに凄い映画を見たことはありません。今後ポーランドでこの映画が公開される事があれば、絶対にもう一度見に行きたいと思います」と熱く感想を伝えていました。観客のなかに佐藤二朗のツイッターを見て映画祭に駆け付けたという日本人の観客からの感想と質問があり「佐藤二朗さんは本当に凄く人気がある方なので、緊張しております。本当にいい映画をワルシャワで観させて頂いてありがとうございます。シアリスなテーマの作品なのに、急にコメディーが入ってくるという、コントラストが凄いなと思いました。日本の映画館って、なかなか笑いが起きないと思うのですが、今回の上映ではところどころ笑いが起きていました。それは監督の想定内でしたか、そこまでの大きな笑いを想定していましたでしょうか?」と鋭い質問に「正直、想定内です(笑)。ただ、嬉しいのは僕が面白いと思って書いて演出をしていたシーンが、日本から遥離れたポーランドで、僕が面白いと思ったところで笑ってくれていたので、こういう気持ちって海を越えるんだって思いました。」「僕は自分がグッとくることしか脚本に書けません。負を抱えた人たち、たとえば逆境、抑圧、生きづらさ、そういう負を抱えた人たちが、飛躍的に劇的に成長するのではなく、ほんの 1 ミリだけ、ほんの半歩だけ、もがきながらも前を向こう、踏み出そうという姿にグッとくるので、僕が書くと、どうしてもそういう脚本になってしまいます(笑)。」30分ほどの舞台挨拶を終えた佐藤二朗監督がスクリーンを出ると、まだまだ質問したりない熱心なワルシャワの映画ファンに囲まれて、作中に関する日本の背景や文化にまで幅広く質問がおよび、約1時間をかけて一人一人に丁寧に質問に答えていた。
映画「はるヲうるひと」2020年公開予定