P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-14
※このクチコミはネタバレを含みます。 [クリックで本文表示]
この韓国映画「王になった男」は、王とその影武者の入れ替わり作戦を通して、指導者の真の役割を問う痛快無比な諷刺喜劇の傑作だ。
先入感なしで初めてこの映画を観た時、イ・ビョンホン主演の宮廷歴史大作というから、またコスチューム・プレイの空疎な内容の時代劇かなと高をくくっていたら、これが予想を覆してあまりの面白さに、続けて2回観てしまいました。
黒澤明監督の「影武者」を持ち出すまでもなく、王そっくりの影武者が本当の王を袖にして頑張ってしまうのだから、面白くないわけがないんですね。
イ・ビョンホンが演じるのは、17世紀初頭に実在した朝鮮王朝の15代目の王・光海君と、その影武者に引っ張り出された王と瓜二つの道化のハソン。
暴君ゆえに毒殺の危機におびえる王の代わりに、15日間だけ本物の王にすり替わる計画が実行されるが、果たしてその結末は? -------。
この手の影武者のお話は、最初のうちはうまくいくものの、やがて素性がばれてとんでもないことになるのが落ち。
この作品でも型通りの展開を見せるが、面白いのは本物の王になりすますイ・ビョンホンのコミカルな演技だ。
かつての”韓流四天王”のひとりで、韓国映画を代表する演技派スターにとどまらず、今やハリウッド映画界にも進出して、世界的な俳優の地位を確立したイ・ビョンホン。 ”七つの顏を持つ男”の異名をとる演技派イ・ビョンホンの愁いと哀しみを秘めた演技はまさに圧巻で、淡々と演じて笑いを取ってしまうその巧さには、唸らされましたね。 その年の韓国の映画賞を総なめにしたのも納得の演技だったと思いますね。 また、王妃役のTVドラマ「トンイ」での爽やかな演技が印象的だったハン・ヒョジュ、王の忠臣ホ・ギュン役の「最終兵器 弓」での憎々しい悪役ぶりが凄かったリュ・スンリョンの演技も素晴らしかったが、それ以上に、最後にハソンを命がけで守るト武将役のキム・イングォンの演技には、思わず目頭が熱くなりましたね。 しかし、何といってもこの映画が優れているのは、道化が王になって初めて見えてくる”リーダーの真の役割”を、チュ・チャンミン監督が的確に描いている点にあると思いますね。