凍える牙 作品情報

こごえるきば

ソウルで奇妙な焼死体が発見された。停車中の車の中にいた男の体が突然発火、車ごと炎上したという。現場を訪れた中年刑事チョ・サンギル(ソン・ガンホ)は、班長から元白バイ警官の若き女性刑事チャ・ウニョン(イ・ナヨン)とコンビで捜査を行うよう命じられる。検証の結果、死体の太股には獣に噛まれた傷痕があり、尿からは覚醒剤が検出、ベルトのバックル内からはタイマーと点火装置が見つかり、引火性の強い化学物質が仕込まれていた。ヤクの売人から被害者の連絡先である塾の場所を聞き出したサンギルは、ウニョンとともに内部を捜査。隠し扉の奥のイメージクラブで、生前の被害者が未成年の少女たちを働かせ、薬物漬けにしていたことを突き止める。そんな中、新たな事件が発生。路上で大型犬に襲われて死亡した被害者は、麻薬と未成年買春の前科を持つナム・サンフンという男で、第一の被害者オ・ギョンイルとは知人同士であった。しかも首の傷痕と現場で採取された動物の毛を分析すると、ギョンイルは狼に噛み殺されたことが判明する。やがてミン・テシクという闘犬賭博に関わっている元ヤクザの存在が浮上、捜査チームはテシクの元恋人ミンジョンが出入りする売春組織のアジトへの手入れを敢行する。だがテシクは不在、車でその場にやってきたミンジョンは猛然と現れた狼に似た大型犬に襲われ、あえなく死亡。ウニョンはその捜査中に肋骨を折る大怪我を負う。“殺人犬”のニュースは大々的に報じられ、DNA解析の結果、その犬の正体は狼との交配種だと特定された。捜査会議では、テシクが過去の性犯罪を揉み消そうとして元仲間のギョンイル、サンフン、ミンジョンを狼犬に殺させたという説が有力視される。しかし病院のベッドを抜け出したウニョンは、元ヤクザのテシクに狼犬のような野性の強い動物を調教できるはずがないと睨み、犬のトレーナーたちを徹底的に洗い、警察犬の元トレーナーであるカン・ミョンホを割り出す。ウニョンは単身、郊外に車を走らせ、ミョンホがひとり娘のジョンアとともに暮らしている古い民家に潜入。地下室でミョンホが真犯人だという決定的な証拠を発見するが、戻ってきたミョンホに鍵をかけられ、例の狼犬とともに閉じ込められてしまう。その直後、ミョンホは何者かに襲撃されて意識を失い、家には火が放たれた。ウニョンは炎に包まれかけた地下室を脱出、ミョンホとジョンアも命を取り留める。焼け跡から見つかったミョンホの日記には、ジョンアが中学生の時に家出、テシクらの一味によって薬物中毒にされ、精神を病み、妊娠までさせられたと記されてあった。復讐に燃えるミョンホは、自らが引き取った幼い狼犬をチンプルと名付けて長年の訓練を施し、悪党どもを皆殺しにする計画を実行したのだ。しかし現場を検証したサンギルは、ある腑に落ちない事実に気づく……。

「凍える牙」の解説

乃南アサの直木賞受賞作を原作に「霜花店 運命、その愛」のユ・ハ監督が映画化。獣による咬殺事件を追うベテラン刑事と新米女性刑事二人の姿を描く。出演は「青い塩」のソン・ガンホ、「パパは女の人が好き」のイ・ナヨン。

乃南アサの直木賞受賞小説を映画化したクライム・サスペンス。ソウルで、停車中の車が突然発火し、中の男性が死亡するという不可解な事件が発生。中年刑事のサンギルと新米女性刑事のウニョンが捜査にあたるが、事件は思わぬ展開を見せ始める。

公開日・キャスト、その他基本情報

公開日 2012年9月8日
キャスト 監督ユ・ハ
原作乃南アサ
出演ソン・ガンホ イ・ナヨン シン・ジョングン イ・ソンミン イム・ヒョンソン チョン・ジン チャン・イノ チョ・ヨンジン ナム・ボラ
配給 ブロードメディア・スタジオ
制作国 韓国(2012)
上映時間 114分

(C) 2012 CJ E&M CORPORATION & UNITED PICTURES, ALL RIGHTS RESERVED.

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ユーザーレビュー

総合評価:5点★★★★★、3件の投稿があります。

P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2025-04-17

乃南アサの直木賞受賞作『凍える牙』といえば、過去に何度かテレビドラマ化され、小説だけでなくドラマで作品の魅力に触れた人も多いだろう。

原作者の乃南アサ自身が、「誰よりも『凍える牙』を理解していることが感じられた」とコメントしている通り、難事件に切り込む様子や主人公となる女刑事の職場での葛藤を描くと同時に、事件の鍵を握るウルフドッグの闇夜を駆け抜ける姿が脳裏に焼き付いて離れない。

車内で不可解な人体発火事件が発生、ベテランながら出世の道が険しいサンギル刑事(ソン・ガンホ)は、新人女性刑事ウニョン(イ・ナヨン)とコンビを組まされ、難事件に挑み始める。

遺体に残った獣に噛まれた跡や、腰に締めたベルトの発火装置で、他殺と判断したサンギルだったが、被害者周辺を洗ううちに、更なる連続殺人事件が発生する。

狼と犬の交配種であるウルフドッグが、噛み殺す現場を唯一目撃したウニョンは、署内の圧力にも屈せず、ウルフドッグの調教主を割り出そうとするのだったが--------。
『悲夢(ヒム)』のイ・ナヨンが、男性社会のしかも警察という組織の中に蔓延する、セクハラやパワハラを受け、上司が真相究明を諦める中、最後まで事件に喰らいつく芯の強いウニョンを、凛とした美しさで好演している。

働く女性であれば、一度は体験があるであろう、苦々しい場面が度々描かれるからこそ、殺人鬼に変貌させられた、ウルフドッグの孤独な瞳に共鳴していくウニョンの気持ちに寄り添えるのではないだろうか。

一方、ウニョンの上司であるベテラン刑事サンギルを、名優ソン・ガンホが、中年の悲哀を漂わせながら飄々と演じ、ちぐはぐコンビぶりを発揮する。
刑事魂と出世欲の間で葛藤する姿もまた、男ならではの孤独な闘いを映し出す。

組織の中に波紋を巻き起こし、真相の追及に没頭するウニョンを次第に受け入れ、サンギルが上司として、刑事として一皮剥けるまでのドラマも映画版ならではの見どころだろう。

人間に調教されたウルフドッグの謎、そして事件があぶり出す社会の闇に迫るアクションシーンも圧巻だが、更なる犯行を重ねるかもしれないウルフドッグを、単身バイクで追いかけるウニョンの真夜中の疾走は、切ないまでに美しかった。

追う者と追われる者、もしくは人間と動物の垣根を越えた”孤独な魂の共鳴”が、サスペンスにとどまらない余韻を残す作品だ。

最終更新日:2025-04-25 11:00:02

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