P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-06-01
※このクチコミはネタバレを含みます。 [クリックで本文表示]
最後の最後に主人公が下す決断と、その行動を、逃げずにしっかりと映像化してみせたところもいい。
自らの手で、肌すらろくに切れないような鈍い中国製十徳ナイフで右腕の切断を試みるんですね。
これは、言葉にするのは簡単ですが、やるとなれば想像を絶する行為だ。
まずは骨を折るところから始め、ナイフを突き立て、筋肉、腱や神経を切断していく映像だけでも、目を塞ぎたくなるのだが、痛さ倍増の音響効果が加わって、耳まで塞ぎたくなること請け合いである。
言ってみれば、この作品は、リアル切り株映画で、「グロ」っていう単純なものではない。
ホラー映画のように、観る人を不快にさせることを目的としていたり、見世物としてのグロ描写でもない。
生きるための最後の希望として、歯を食いしばる主人公と観る者の心がシンクロし、画面を見つめる我々もまた、必死で歯を食いしばり、失神したりしないように踏ん張るのだ。 こういう描写があるために、この作品を敬遠する向きもあるようだが、しかし、この描写なしには作品は成立しない。 鑑賞後の、不思議な清々しさは、あのシーンを乗り越えて初めて獲得できるのだと思う。 主人公に同化して、彼の127時間を安全で快適な場所で疑似体験する、これはそういう作品なのだと思います。