P.N.「pinewood」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2021-09-04
久し振りに本篇をスター・チャンネル放映で見ると超豪華キャスト何だと驚かされる。優しい女教師役のサリー・ホーキンス始め,主演の若手3人もその後の活躍目覚ましい。説明を排して感情移入も拒否したスタイルで有りながらどうしようも無く惹き付けられるカズオ・イシグロの本篇に就いて「原作を何度も読んだわ」と彼女は微笑を交えてはにかんだ
わたしをはなさないで
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久し振りに本篇をスター・チャンネル放映で見ると超豪華キャスト何だと驚かされる。優しい女教師役のサリー・ホーキンス始め,主演の若手3人もその後の活躍目覚ましい。説明を排して感情移入も拒否したスタイルで有りながらどうしようも無く惹き付けられるカズオ・イシグロの本篇に就いて「原作を何度も読んだわ」と彼女は微笑を交えてはにかんだ
本篇はロードショー公開時に渋谷のBunkamura cinemaで拝見したカズオ・イシグロ原作の異色SFの名篇…。そして,NHKTV土曜ドラマ枠で放送された渡辺謙主演の同じくカズオ・イシグロ作品の映像化「浮世の画家」も戦争の責任問題を秘めた洋画家を廻るホームドラマだった!
ありえない設定なのに登場人物たちがリアルに感じられた。主人公たちはすごく無抵抗だけど、よるべない身のクローンならそうなるのも自然かもしれない…。何が人を人たらしめるのか。
最初からある程度の覚悟はしつつ、悲しい結末にはやっぱりショック。友情、愛情、嫉妬などが複雑に絡まる関係がリアルで普遍的であるぶん、あまりに不条理な運命が辛くてやりきれない気持ちに。科学的に可能ならどこまでも求めて良いのか、原発事故にも全く同じことを感じる昨今ですが。
一見「究極の愛」を描いているように見えて、実は「究極のエゴ」を描き出した秀作。主人公三人の中では、献身的で、優しさ満ちているヒロインが、実は一番、自己愛が強い。恋人との間も「真実の愛」というよりは、お互いナルシシズムに近いものがある。むしろ一番身勝手な親友の女性が、唯一、「他者との関係」を真剣に築こうとしていた。
彼等を見ていて、「こうなるだろう」と悟った瞬間が虚しく、とても悲しい。