P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- なし
- 投稿日
- 2024-07-13
かねてより、クローネンバーグ監督は、善悪の彼岸で死の匂いに浸っていたわけですが、そのニヒルでシニカルな筈のクローネンバーグが、モラルと希望を探している。
実に、皮肉なものです。
かつてのクローネンバーグに比べると、甘すぎると思う人もいるだろうが、ドラマの保守性とかすかなモラルがなければ、生きている意味もないではないか。
暗い映画なのに、久しぶりに救われた気持ちになりました。
いーすたんぷろみす
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かねてより、クローネンバーグ監督は、善悪の彼岸で死の匂いに浸っていたわけですが、そのニヒルでシニカルな筈のクローネンバーグが、モラルと希望を探している。
実に、皮肉なものです。
かつてのクローネンバーグに比べると、甘すぎると思う人もいるだろうが、ドラマの保守性とかすかなモラルがなければ、生きている意味もないではないか。
暗い映画なのに、久しぶりに救われた気持ちになりました。
※このクチコミはネタバレを含みます。 [クリックで本文表示]
あるいは、トルコ風呂では、全裸の男たちが、ナイフ一本で斬りつけ、殺し合うのだ。
銃ではなく、ナイフに頼るところが、またとても怖いのだ。
だが、この映画は、実はチャールズ・ディケンズの世界だと思う。
闇に包まれてはいるが、モラルが残されている。
起承転結のついた物語を落としどころに持っていく、古風な話法もディケンズそのもの。
ナオミ・ワッツは、邪悪の詰まった箱を開けてしまったパンドラだけど、箱の底にはちゃんと希望が残されているのだ。
非情な暴力とわずかな希望の二重性を見事に表現した、主役のヴィゴ・モーテンセン、実に素晴らしい名演です。
暴力の絶えない世界の中で、倫理はどこに残されるのか。
コーエン兄弟、ティム・バートン、ポール・トーマス・アンダーソンと、優れた監督は皆、このテーマなのだ。
ロンドンの街に広がるロシアン・マフィアの影。
その犠牲となった少女の遺した手記を手にした、助産師ナオミ・ワッツは、産み落とされた遺児の身元を探したために、マフィアに追われる身となってしまう。
全編を通して非常に暗い。ましてや監督は、「ビデオドローム」や「イグジステンズ」など、肉体のグロテスクな変容に取り憑かれてきたデヴィッド・クローネンバーグですから。
何か、とてつもなく悪い予感がしてきます。
ところが、観終わって、後味はそう悪くないのだ。
それどころか、闇に沈むロンドンの片隅に咲いた一輪の花という味わいなのだ。
ただ、そうは言ってもクローネンバーグの映画だから、バイオレンスは、たくさんあって、死体の身元を隠すために、指先を一本一本切り落とす。
そして本篇ロシアン・マフィアの闇に迫るデヴィッド・クローネンバーグ監督の傑作
ナオミ・ワッツ観たさで見た本篇,助産師役で赤ちゃんと相性の佳いヒロインは実際の出産の中で撮影された映画・愛する人へ