消えた天使 作品情報

きえたてんし

性犯罪登録者の監察官である公共安全局のエロル・バベッジ(リチャード・ギア)は、18年間続けてきたその仕事を退職するように言い渡されていた。長年多くの登録者の監視をし続け、バベッジは心身ともに疲弊していた。退任まで残り18日となった日、後任となるアリスン・ラウリー(クレア・デインズ)がやってくる。指導を任されたバベッジはアリスンを連れ、担当している登録者たちの元を訪れる。強姦罪で摘発された男、バラバラ殺人で死刑になった男の妻……ふたりが次の場所へ車で移動していると、バベッジの担当地域での誘拐事件の知らせが入ってくる。被害者の名前はハリエット・ウェルズ(クリスティーナ・シスコ)。大学近くの線路脇で乗馬ブーツが発見されたのだ。単なる家出の可能性もありながら、バベッジは「自分が監視し続けている登録者たちの中に犯人がいる」と確信していた。直感を信じるバベッジだが、その強引で自己中心的な行動にアリスンはついていけないとばかりに激しい言い合いを重ねるが、アリスンは説得され、渋々ながら共に犯人を追うことになる。誘拐犯を登録者リストから絞り込んでいくと、児童ポルノカメラマンのグレン・カスティス(マット・シュルツェ)という男が浮かび上がってくる。スタジオを訪れたふたりに気付き、カスティスは車で逃走する。取り逃がしたバベッジだが、彼のラボから数本のネガを押収する。現像してみた写真には、切断された手足とハリエットとは別の縛られた少女の姿があった──ハリエットはどこにいるのか? 事件の真犯人は誰なのか? 手がかりをもとにさらに捜査を進めていくと、バベッジの担当する性犯罪者たちの意外な事実が明らかになっていく。

「消えた天使」の解説

出所後の性犯罪者を監視し、再犯を防止する監察官を主人公に、人間の心の闇と残虐性に鋭く切り込む社会派サスペンスエンタテイメント。監督は「インファナル・アフェア」三部作のアンドリュー・ラウ。脚本は「コモド」のクレイグ・ミッチェルとハンス・バウアー。出演は「シカゴ」のリチャード・ギア、「めぐりあう時間たち」のクレア・デインズ。

公開日・キャスト、その他基本情報

公開日 2007年8月4日
キャスト 監督アンドリュー・ラウ
出演リチャード・ギア クレア・デインズ ケイディー・ストリックランド アヴリル・ラヴィーン レイ・ワイズ ラッセル・サムズ マット・シュルツ クリスティーナ・シスコ ドウェイン・バーンズ エド・アッカーマン フレンチ・スチュワート
配給 ムービーアイ
制作国 アメリカ(2007)
上映時間 105分

ユーザーレビュー

総合評価:4点★★★★、1件の投稿があります。

P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★
投稿日
2024-06-03

この映画「消えた天使」は、「インファナル・アフェア」シリーズを手掛けた、香港映画界の鬼才・アンドリュー・ラウ監督がハリウッド進出を果たしたサイコ・スリラー作。

ハリウッドデビュー作にして、ベテラン俳優・リチャード・ギアを主演に迎え、「インファナル・アフェア」とも繋がる善と悪の境界線の曖昧さを切り取る。

18年間、性犯罪の監視を続けてきた、監察官のバベッジは、退職前の最後の仕事として、後任となるアリソンの指導を任された。
そんなある日、少女の誘拐事件が発生する。

バベッジは、彼が監視を続けてきた前科者の中に、事件に関与している人物がいることを確信し、独自に捜査を始めるのだった-----。

アメリカでは2分に1回の割合で、快楽犯罪が発生しているという。
そうした快楽犯罪者は、再犯の可能性が高いため、身元が公開され、保護観察官による監視下に置かれている。

この映画のテーマは、悪を知るためには善が悪に近づかねばならないということだ。
この映画の中には、凶悪な性犯罪者たちが登場するが、その誰よりも危ない存在であるのは、彼らを監視する立場のバベッジだ。

犯罪抑止の反証として問題となっている、性犯罪者の出所後の人権問題を体現するかのような、彼らのプライバシーをずけずけと侵し、越権行為を繰り返す。 性犯罪者への不信感は常軌を逸しており、犯罪抑止の為ならば、自らの手を汚すことも辞さない。 そして、それだけではなく、バベッジ本人の私生活にも、性犯罪者の特徴と言われる条件が、次々と符号していく。 バベッジが指導することとなった、後任の女性監察官の家の窓際にすっと立っている姿は、犯罪者と見間違えられても仕方がない不気味さだ。 しかし、バベッジは最後まで、誘拐された少女を救いたいという思い込みに近い執念と、性犯罪者への異様な執着を胸に秘めており、彼の本質は善であると言えるのだろう。 彼の心理状態は、ほとんど彼が監視する対象と変わらず、その風貌もあまり差異が見られなくなっている。 彼は自分自身が、相手側の色に染められていけばいくほど、その本質だけは強くなっていく。 その本質の暴走を、自分自身でも制御できなくなっているのだ。

悪を知るためには、善が悪になる必要があるというテーマ性は、善と悪が入れ替わる設定で話題を呼んだ「インファナル・アフェア」と符号する点がある。 こういった破天荒な主人公を、映画やドラマではカッコいい存在として描きがちであるが、この映画はバベッジを本当の意味で危ない存在として描いている点が、新味であるとも言える。 切り替えの早いカット割り、照明や編集へのこだわり、際どいまでのグロさとエロさを見せる挑発的な描写といい、サイコ・スリラーものとしても、圧倒的な映像表現となっている。 「セブン」や「羊たちの沈黙」といった、その分野の金字塔的な作品の二番煎じ的な感覚は抜けず、それを超えるインパクトはないものの、観た後にどっと疲れが襲う、重々しいサイコ・スリラーに仕上がっていると思う。

最終更新日:2024-06-13 16:00:02

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