P.N.「グスタフ」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2019-09-30
旧東ドイツの秘密警察の盗聴、諜報、尋問などの国家ぐるみの闇の実態が興味深い。それが単なる告発ものの暴露ではなく、国家保安省の男が盗聴を任務する過程で、徐々に自由思想と芸術に影響を受け、社会主義体制の国家に反する裏切り行為を行い、ひとりの反体制思想の劇作家を救う人道主義になっているのがユニーク且つロマンチックである。劇作家の愛人が薬物中毒の意思の弱さから密告をしてしまい罪の意識に苛まれるサブストーリーと調和して、人間の救済に対する作者の信念を感じることが出来る。ラスト、真実を知った劇作家が、救ってくれた元保安省局員に面会せず、小説の序文で感謝を添えるカットが、映画ならではのフィナーレで感動し胸が熱くなる。
時代や社会に惑わされない、人の歩むべき道を教えてくれる優しく美しい映画。