エレファント 作品情報

えれふぁんと

オレゴン州ポートランド郊外にある高校での、初秋のとある一日。男子生徒のジョン(ジョン・ロビンソン)は、酒に酔った父(ティモシー・ボトムズ)と車に乗って学校に到着。父のだらしなさに呆れつつ、彼を迎えに来てくれるよう兄に電話する。写真好きのイーライ(イライアス・マッコネル)は、公園を散歩中のパンク・カップルを撮影。アメフトの練習を終えたネイサン(ネイサン・テイラー)は、ガールフレンドのキャリー(キャリー・フィンクリー)と待ち合わせる。学食では仲良し3人組の女子、ジョーダン(ジョーダン・テイラー)とニコル(ニコル・ジョージ)とブリタニー(ブリタニー・マウンテン)が、ゴシップとダイエットの話。そして食べたばかりの昼食をトイレで吐き出す。クラスルームではGSAと呼ばれる同性・異性愛会が開かれ、議論に熱が入る。自意識過剰の文科系女子ミシェル(クリスティン・ヒックス)は教師にチクチク文句を言われている。物理の授業では熱心に質問する生徒と、後ろの席のアレックス(アレックス・フロスト)に濡れたティッシュ玉を投げつけるいじめっ子がいる。アレックスと親友のエリック(エリック・デューレン)は、宅配便で銃を受け取ると、二人一緒にシャワーを浴び、これまで経験のなかったキスを試してみる。そして重装備を抱えて校舎に入っていき、外に出たジョンとすれ違ったあと、校内の人間を次々と射殺。やがてアレックスはエリックを射殺し、食肉貯蔵庫に隠れていたネイサンとキャリーを追い詰めていくのだった。

「エレファント」の解説

無差別殺人事件が勃発する高校の一日をドキュメンタルに描いた青春群像劇。1999年に起こったコロンバイン高校銃乱射事件がモデルになっている。監督・脚本・編集は「小説家を見つけたら」のガス・ヴァン・サント。製作総指揮は「電話で抱きしめて」などの女優・監督としても知られるダイアン・キートンほか。撮影は「小説家を見つけたら」のハリス・サヴィデス。出演は本作で大きく注目されたジョン・ロビンソンを始め、高校生役はオーディションで選ばれた素人で、ほか「レイク・フィアー」のティモシー・ボトムズなど。2003年カンヌ国際映画祭パルムドール、監督賞を受賞。

公開日・キャスト、その他基本情報

公開日 2004年3月27日
キャスト 監督ガス・ヴァン・サント
出演アレックス・フロスト エリック・デューレン ジョン・ロビンソン イライアス・マッコネル ジョーダン・テイラー キャリー・フィンクリー ニコル・ジョージ ブリタニー・マウンテン アリシア・マイルズ クリスティン・ヒックス ベニー・ディクソン ネイサン・タイソン ティモシー・ボトムズ マット・マロイ エリス・E・ウィリアムズ シャンテル・クリステンスン
配給 東京テアトル=エレファント・ピクチャー
制作国 アメリカ(2003)
上映時間 81分

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ユーザーレビュー

総合評価:4.33点★★★★☆、3件の投稿があります。

P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2024-06-16

”我々観る者の心の奥深くに、ある種の衝撃とスリリングな戦慄を与えてくれるガス・ヴァン・サント監督の問題作「エレファント」”

優れて詩的な映像と、それと対照的な衝撃的な事件。
アメリカのどこにでもあるような、ある高校の一日を描いた、映像の詩人ガス・ヴァン・サント監督の「エレファント」は、我々観る者の心の奥深くに、”ある種の衝撃とスリリングな戦慄”を与えてくれる、非常に美しく、しかし、悲しい作品です。

どこにでもありそうな、静けさをたたえた、一見、平凡なたたずまいを見せる、郊外の高校。
アルコール依存症の父親を持つジョン、他人との人間関係がうまく出来ないミシェル、いじめを受けているアレックスたち、複数の高校生の日常が、まるでドキュメンタリー映画のように、淡々と画面に映し出されます。

そして、カメラは長回しのワンシーンで、彼ら生徒の背中を執拗に追って行きます。
時間を遡り、同じ場面を違う視点で描く事で、彼らの単調で平凡な日常は”重層的な意味”を帯びてきます。

彼ら生徒役は、全てオーディションで選ばれた全くの素人。 役名は本名で、自分自身の言葉で即興性を採り入れたセリフは、この年代の若者の、実に自然なリアリティーを感じさせて、ガス・ヴァン・サント監督の演出のうまさが光ります。 この映画は、実際に多くの死傷者を出したアメリカのコロンバイン高校の銃乱射事件を下敷きにして描いていますが、ガス・ヴァン・サント監督は、この事件の原因を描こうとはしておらず、自分なりに独自に事件を再構築する事で、問題の本質を全く異なる側面から浮かび上がらせ、生徒たちの”とらえどころのない虚ろな魂”を表現しているのだと思います。 しかし、我々映画を観る者は、既に起きた事件の中で、”若者が抱える心の闇の深さ”を感じ、その不確かで得体の知れない何かに衝撃を受けるのです。 実際に起きた事件をガス・ヴァン・サント監督の感性で再構築し、美しい映像表現で描き直す、作者のこの映画に賭ける思いはどこにあるのか? その映像の向こう側にあるものの正体に、どのようにしたら迫る事が出来るのか?


観終った後も、心の中で説明し難い、ある種の奇妙な違和感がどうしても残ってしまいます。 映像の美しさが、異常な程に際立つため、悲しさと畏怖の念だけが、心の奥深く、沈潜していくのです。

最終更新日:2024-11-06 17:05:40

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