ヴェラ・ドレイク 作品情報
べらどれいく
1950年、ロンドン。労働者階級の人々が住む界隈で暮らすヴェラ・ドレイク(イメルダ・スタウントン)は、家政婦の仕事をしながら、体の具合が悪い隣人たちを訪ねて身の回りの世話をしている。愛する夫のスタン(フィル・デイヴィス)、息子のシド(ダニエル・メイズ)や娘のエセル(アレックス・ケリー)ら家族に囲まれて、笑顔を絶やさない彼女は周囲の人々にとってかけがえのない存在だったが、実は一つの秘密を抱えていた。長年、望まない妊娠をして困っている女たちに、非合法の堕胎の手助けをしていたのだ。女たちとヴェラを仲介するのは、ヴェラの子供の頃からの友人リリー(ルース・シーン)だったが、堕胎料金はすべて彼女が着服していた。そんなある日、近所に住む一人暮らしの青年レジー(エディ・マーサン)が、エセルと婚約。スタンとヴェラは弟夫婦を自宅に呼んで、ささやかなお祝いの席を設けるが、そこにウェブスター警部(ピーター・ワイト)が現われる。ヴェラが助けた娘の体調が急変し、堕胎のことが明るみになったのだ。何も知らない家族が見守る中、事実を認めたヴェラは署に連行されていく。こうして家族の絆は初めての危機を迎えるが、スタンのヴェラへの揺るぎない愛のおかげで、怒っていたシドも徐々に母への愛を取り戻していった。年が明けた1月10日、ヴェラの裁判が行なわれる。裁判長(ジム・ブロードベント)は2年6ヵ月の禁固刑という厳しい判決を下し、ドレイク家の面々は、ただヴェラの帰りを待つのだった。
「ヴェラ・ドレイク」の解説
違法とされていた堕胎を善意で助けていた中年女性の運命を描くドラマ。監督・脚本は「人生は、時々晴れ」のマイク・リー。撮影も「人生は、時々晴れ」のディック・ポープ。音楽もリー作品常連のアンドリュー・ディクソン。美術も「人生は、時々晴れ」「五線譜のラブレター」のイヴ・スチュワート。編集は「007/ワールド・イズ・ノット・イナフ」のジム・クラーク。衣裳は「人生は、時々晴れ」「猟人日記」のジャクリーン・デュラン。出演は「恋におちたシェイクスピア」のイメルダ・スタウントン、『ハイ・ホープス』(V)のフィル・デイヴィス、「秘密と嘘」のピーター・ワイト、「堕天使のパスポート」のエイドリアン・スカーボロー、「人生は時々、晴れ」のルース・シーン、「21グラム」のエディー・マーサン、「フロム・ヘル」のレスリー・シャープ、「ブリジット・ジョーンズの日記」シリーズのジム・ブロードベントほか。2004年ヴェネチア国際映画祭金獅子賞、主演女優賞、同年ブリティッシュ・インディペンデント映画賞5部門、2005年全米批評家協会賞主演女優賞、同年BAFTA賞11部門など多数受賞。
公開日・キャスト、その他基本情報
公開日 | 2005年7月9日 |
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キャスト |
監督:マイク・リー
出演:イメルダ・スタウントン フィル・デイヴィス ピーター・ワイト エイドリアン・スカーボロー ヘザー・クラニー アレックス・ケリー サリー・ホーキンス エディ・マーサン ルース・シーン ヘレン・コーカー マーティン・サヴェッジ シニード・マシューズ フェネラ・ウールガー ジム・ブロードベント |
配給 | 東京テアトル |
制作国 | フランス イギリス ニュージーランド(2004) |
上映時間 | 125分 |
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ユーザーレビュー
総合評価:5点★★★★★、1件の投稿があります。
P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-20
1950年代のロンドン、裕福な家の家政婦を勤めながら、近隣の老人たちの家を回って、あれこれと面倒を見る働き者の主婦ヴェラ・ドレイク。
物静かな夫、青春を謳歌する息子、人見知りは激しいが気持ちの優しい娘。
心安らぐお茶の時間、暖かい夕食。
なんの問題も無さそうな家族だが、彼女には家族に秘密でやっている事があった。
無償で、望まない妊娠をした女性たちを、助けてやっているのだ。
つまり、堕胎の手助けを。
医師の免許を持たない彼女のやり方は、極めて原始的なものだが、子供を持つ訳にはいかない、特に貧しい女性たちに彼女はなくてはならない存在なのだった。
たとえ、それが法に背く事だと知っていても。
だが、クリスマスの夜、ヴェラの処置を受けて容態が悪くなった金持ちの娘の親から訴えられて、ヴェラは家族の前で警察に連行される。
訳が解らず途方に暮れる家族たち。
果たしてヴェラに下される判決は?-------。
この映画のうまいところは、原因の一因である男性たちを責めず、根本的な問題を蔑ろにしている社会を責めず、客観的に起こった事をそのまま描こうとしているところです。 ヴェラのやっていた事をいいとか悪いとか言うのではなく、周りの人間たちが事件を、彼女をどう扱うのか、最も親しい人間を責め蔑む世間に、家族がどう対応するのかを描いているところです。 主演のイメルダ・スタウントンの演技は実に見事で、実際にいる人みたいでした。 軽快に日々の仕事をこなし、傷ついた娘たちに優しい言葉をかけ、家族と笑い、警察に行ってからは小動物のような目を潤ませ、聞き取れないほどの小さな声で「娘さんたちを助けました」と言う彼女は、ヴェラ・ドレイクそのものでした。