濹東綺譚(1992) 作品情報
ぼくとうきだん
1879年、良家の長男として生まれ育った荷風(津川雅彦)は父の意向に反し、早くから文学の道を志した。荷風文学の真髄は女性を描くことで、特に社会の底辺に生きる女性達に目が向けられた。そのため紅燈に親しむことも多く、荷風は文人たちから遊蕩児とみなされた。文壇という特殊世界に入って文士と交わることを嫌い、究極において紳士である荷風は、常に女性から手痛い被害を被る。それは女性に真の愛を求める荷風の人生への探究でもあった。やがて玉ノ井のお雪(墨田ユキ)と出会った荷風は、社会底辺の世界に生きながらも清らかな心をもった彼女に、運命的なものを感じる。しかし、57歳の荷風にとって、年のひらきのあるお雪と結婚するには、互いの境遇が違い過ぎた。それでもお雪の純情さに惹かれた荷風は、彼女と結婚の約束をする。だが、昭和20年3月10日。東京大空襲の戦火に巻き込まれて、2人は別れ別れになってしまう。戦後、昭和27年のある日、お雪は新聞で荷風が文化勲章受章者の中にいるのを見て驚くが、あの人がまさかこんな偉い人ではないだろうと、人違いだときめてしまう。そして2人は二度と出会うことはなかった。それでも孤独の中に信ずる道を歩き続けた荷風は、昭和34年4月30日、市川在の茅屋で誰に看取られることなく80歳の生涯を終えるのだった。
「濹東綺譚(1992)」の解説
墨東(ぼくとう)、玉ノ井に咲いた可憐な娼婦お雪との狂おしいまでのロマンスを中心に、文化勲章受賞作家であり、一代の遊蕩児であった永井荷風の半生を描く。脚本・監督は「さくら隊散る」の新藤兼人。撮影は同作の三宅義行がそれぞれ担当。
公開日・キャスト、その他基本情報
公開日 | 1992年6月6日 |
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キャスト |
監督:新藤兼人
原作:永井荷風 出演:津川雅彦 墨田ユキ 宮崎淑子 瀬尾智美 八神康子 杉村春子 乙羽信子 佐藤慶 井川比佐志 河原崎長一郎 戸浦六宏 上田耕一 河原崎次郎 樋浦勉 大森嘉之 浜村純 原田大二郎 角川博 浅利香津代 |
配給 | ATG=東宝共同(提供 ATG) |
制作国 | 日本(1992) |
年齢制限 | R-15 |
上映時間 | 116分 |
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ユーザーレビュー
総合評価:5点★★★★★、5件の投稿があります。
P.N.「水口栄一」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-07-09
濹東綺譚をまた観た。やはり素晴らしいと思った。私はこの映画は共感できるところが多いと思う。だが、もし私が荷風の立場だったら、どうしただろうと考えることがある。荷風はお雪を幸せな家庭の人にするのは自分ではないと考える。そして玉の井に通うこともなくなり、お雪と別れてしまうのだ。荷風の気持ちもわかる。けれども私ならきっとお雪を奪って、幸せにしてやっただろうと思う。この映画はほんとに古き良き時代が見事に描かれていると思う。だからこの映画を観ていると、とても心地よいのだ。