武蔵野夫人 作品情報

むさしのふじん

武蔵野の高台に住む道子と夫の秋山のもとへ道子の従弟勉が復員してくる。勉は道子と共に住むことを望んだが、嫉妬深い秋山は彼をアパートに住まわせる。勉の生活が荒れることを心配した道子は向かいに住む従兄の妻富子の提案で、彼に富子の娘雪子の家庭教師をさせることにする。武蔵野の小道を一緒に散策するうちに道子と勉は互いに男女として意識しあうようになった。しかしあけすけな富子はそれを秋山に暴露してしまい、秋山はそれを許す代わり富子と関係を持つようになる。ある時嵐にあった道子と勉はホテルで一夜を過ごすが、道子は勉の激情を優しくなだめるのだった。富子と旅に出たものの捨てられた秋山が家に戻ってみると、道子は静かに息を引き取っていた。

「武蔵野夫人」の解説

製作は「舞姫(1951)」の児井英生で、大岡昇平の原作から福田恒存が潤色して「お遊さま」の依田義賢が脚色したものである、演出は「お遊さま」の溝口健二で撮影は「袴だれ保輔」の玉井正夫が担当している。出演者の主なものは「夜の未亡人」の田中絹代「せきれいの曲」の轟夕起子に山村聡、「盜まれた恋」の森雅之に片山明彦、大谷伶子、進藤英太郎など。

公開日・キャスト、その他基本情報

キャスト 原作大岡昇平
出演田中絹代 森雅之 山村聡 轟夕起子 中村美那子 片山明彦 進藤英太郎 平井岐代子 西田智 塩沢登代路 大谷伶子 深見泰三 千石規子
配給 東宝
制作国 日本(1951)
上映時間 92分

ユーザーレビュー

総合評価:3点★★★☆☆、1件の投稿があります。

P.N.「グスタフ」さんからの投稿

評価
★★★☆☆
投稿日
2019-10-23

武蔵野台地に歴史を持つ家柄のひとり娘道子と従弟勉の恋愛ドラマ。戦後日本の自由恋愛の道しるべを、スタンダールのフランス文学に傾倒した道子の夫忠雄が解説する内容で、原作者大岡昇平の分身になるのか。ただし、このインテリを森雅之が巧みに演じるも、姦通を否定しない自由論者で正義感のある男としては描かれていない。この夫婦に道子の従兄大野夫婦を加えた5人の会話劇としては面白い。自由奔放な恋愛観を持つ妻富子と忠雄の絡むところなど溝口監督らしい色が出ている。また、復員してきた勉に道子が接近するのを恐れる忠雄の嫉妬に、インテリ男の弱い内面が嫌らしく出ていていい。
しかし、道子と勉の関係は凡庸で、美しい背景を舞台にする耽美的な演出が盛り上がらない。小説を読むように観る映画の範疇に終わっている。田中絹代、森雅之、片山明彦、轟夕起子、山村聡と適役とも言い切れないキャスティング含め、溝口映画としては成功していない。すべての違和感を楽しめる自分は好きな映画だけど。

最終更新日:2022-07-26 11:03:45

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