P.N.「グスタフ」さんからの投稿
- 評価
- ★★★☆☆
- 投稿日
- 2019-10-21
明治の自由民権運動に活躍した実在の女性が主人公で興味深いが、女性解放のテーマを持つ「女性の勝利」「女優須磨子の恋」同様、溝口映画としての輝きを得ていない。”人間を描く”ところまで、溝口監督の女性主人公に対する思い入れがないように感じる。藩閥専制と自由党の対立から明治22年の大日本帝国憲法制定そして第一回総選挙と、激動の時代の受け身に過ぎない主人公は、影響や後押しをする男性に裏切られる被害者でもある。悪い男が女性の自由や権利を阻害しているとする安直な結末だ。その後の主人公の活動にこそ意味があると思うのだが。日本の近代化の歩みを批判して、戦後の女性解放には民主主義が必要と云いたいのだろう。
弁護士、女優、政治運動家といった知的女性を主人公にした戦後の3作品は、題材選びの苦悩がそのまま表れている。