P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-06-02
この映画「酔いどれ天使」は、黒澤明監督と三船敏郎のコンビによる、輝かしき第1作目の作品だ。
戦後の混乱が続く映画界で、ようやく占領下のお仕着せを脱却し、混乱期の日本を真正面から捉えた作品になっていると思う。
戦後の混乱の中に生きる人間像が、生き生きと描かれ、黒澤明監督は、独自の個性的なテーマや技法を確立し、新しい一面を鮮やかに示している。
戦後の焼け跡の闇市みたいな所を舞台に、志村喬の酔いどれの医者と、ヤクザの三船敏郎との間に、奇妙な友情が生まれてくる物語で、黒澤明監督の基本的な原点が見られる作品だ。
この黒澤明監督の特色だが、戦後のある時期を、単に淡々と描くのではなく、ある種どぎついものを印象的に描いて、映画の持つダイナミズムを強調している。
志村喬と三船敏郎の師弟的な関係も、黒澤映画の基本的なパターンで、これは彼の「姿三四郎」から「赤ひげ」まで続いていく構造だと思う。