女性の勝利(1946) 作品情報

じょせいのしょうり

自由主義陣営の評論家山岡敬太は終戦と共に獄舎から釈放されたが五年間にわたる獄中生活は心身を再起不能にし彼は獄舎から直ちに病院へという惨めな姿であった。この敬太を温かく迎えたのはかっての彼の愛人女弁護士細川ひろ子であった。この二人の恋愛再燃を最も恐れたのはひろ子の姉みち子であり、牢固たる封建思想の持ち主であるその良人河野検事であった。司法の民主化が叫ばれその運動が活発化するに従って弁護師団は河野検事を粛正の第一位に擬しその機会を狙っていた。ひろ子は女学校時代の同窓生朝倉もとが貧窮のドン底にあって良人に死なれ悲嘆のあまり精神錯乱を起こして愛児を死に至らした事件の公判にもとの弁護士として立ち図らずも河野検事と対決、河野検事は被告が母としての責任を回避し女の道をふみした非倫行為なりとし懲役五年を求刑したのに対し日本の封建的家族生活の欠陥を指摘、日本の全女性があまりにも男性依存の精神に培われた結果一度良人という支柱を失えばたちまち苦境に陥入ると説破、この事件は日本社会の罪なりとして無罪を主張、同時に女性の男性従属よりの覚醒を叫んだ。この公判半ばに敬太はひろ子の勝訴を希いながら死んだ。ひろ子はこの悲報にもめげず女性解放の信念を貫くべくもとの第二回公判廷へと力強く歩んで行った。

「女性の勝利(1946)」の解説

「名刀美女丸」に次いで溝口健二監督が大船撮影所で製作せる作品。

公開日・キャスト、その他基本情報

キャスト 出演桑野通子 田中絹代 松本克平 徳大寺伸 三浦光子 高橋豊子 紅沢葉子 内村榮子 長尾敏之助 風見章子 若水絹子 奈良真養
配給 松竹
制作国 日本(1946)
上映時間 84分

ユーザーレビュー

総合評価:3点★★★☆☆、1件の投稿があります。

P.N.「グスタフ」さんからの投稿

評価
★★★☆☆
投稿日
2019-10-16

一言でいえば、鈍感な映画である。立派な主張が主人公たちから述べられているが、本物に聞こえない。身体の動きが付いていってない。溝口の演出にそれを修正する気力もないようだ。戦後第一作の、時勢を反映した民主主義のスローガンだけが唯一の関心事で、巨匠の得意とするリアリズムの鋭さがない。
物語は、夫を失い極貧となり精神を病んだ末、わが子を殺めた女性を、主人公が裁判の担当弁護士になり救うという話。主人公は、戦前の男性優位の封建的な社会に罪があり、被告の無罪を主張する。これでは、過去を否定するために創作された極端な作り話としか思えない。虐げられた女性を描くのが溝口の手腕ならば、主人公は弁護士ではなく、被告の女性にするべき題材だろう。溝口作品で裁判劇というと名作「滝の白糸」があるが、比較してはいけない。これはGHQの支配下のやむにやまれぬ仕事と捉えるべきである。

最終更新日:2023-03-08 02:00:05

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