狂った果実(1956) 作品情報

くるったかじつ

滝島夏久の弟春次は、兄に似ぬ華著な四肢を持ち、まだあどけない“坊や”だった。女漁りの巧い夏久に比べて、春次は全然女を知らなかったが、或る日、逗子駅ですれ違った娘の瞳に、何故かドギマギして立ちすくんだ。その日の夕方、友人平沢のサマーハウスで兄弟は友人達とパーティを開く相談を決めた。皆夫々未知の女性を同伴することに決まると、春次は又もや先刻の娘の姿を思い出すのだった。翌々日ウォータースキーのレースで夏久と組んだ春次は、思いがけずも仰向けに泳いでいる例の娘天草恵梨に逢い、彼女を一色海岸まで送った。やがてパーティの当日、春次は洒落たカクテルドレスを着た恵梨を同伴して現われ、夏久達を驚かせた。パーティを抜け出た二人は車を駆って入江に走り、春次は生れて始めての接吻を恵梨に受けその体を固く抱きしめた。一週間後、夏久は横浜のナイトクラブで外国人と踊る恵梨の姿を見た。彼は春次に黙っていることを条件に、彼女と交渉を持つようになる。恵梨は春次の純情さを愛する一方、夏久の強靭な肉体にも惹かれていた。だが、やがて恵梨の心にあった兄弟への愛情の均衡も破れ、彼女は夏久の強制で春次との待ち合せを反古にした。平沢から恵梨と夏久に関する総ての出来事をぶちまけられた春次は、憑かれたようにモーターボートで二人の後を追った。早朝の海の上、春次は夏久と恵梨の乗ったヨットの周囲を乗り廻しながら、無表情に二人を眺めていた。夏久は耐えられなくなり思わず「止めろ、恵梨はお前の物だ」と叫ぶなり彼女を弟めがけて突きとばした。その瞬間舳先を向け直した春次のモーターボートは恵梨の背中を引き裂き、夏久を海中に叩き落してヨットを飛び越えた。白いセールに二人の血しぶきを残したヨットを残して、モーターボートは夏の太陽の下を、海の彼方へと疾走して行った。

「狂った果実(1956)」の解説

大人の世界に反抗する若い世代のモラルを描いた「太陽の季節」姉妹篇。原作者石原慎太郎自ら脚色し、「狙われた男」についで中平康が監督、「続ただひとりの人」の峰重義が撮影を担当した。主な出演者は、「太陽の季節」に出演した新人石原裕次郎、「流離の岸」の北原三枝、「続ただひとりの人」の東谷暎子のほか岡田眞澄、藤代鮎子、長門裕之の弟津川雅彦など。原作者石原慎太郎が特別出演する。

公開日・キャスト、その他基本情報

キャスト 監督中平康
原作石原慎太郎
出演石原裕次郎 津川雅彦 芦田伸介 藤代鮎子 北原三枝 ハロルド・コンウェイ 岡田眞澄 東谷暎子 木浦昭芳 島崎喜美男 加茂喜久 紅沢葉子 渡規子 ピエール・モン 竹内洋子 原恵子 潮けい子 石原慎太郎 近藤宏 山田禅二
配給 日活
制作国 日本(1956)
上映時間 86分

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ユーザーレビュー

総合評価:4.67点★★★★☆、3件の投稿があります。

P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★
投稿日
2024-06-02

この中平康監督の日活映画「狂った果実」は、「太陽の季節」で芥川賞を受賞した石原慎太郎の、太陽族モノの第2弾。

公開当時、台頭しつつあった戦後世代の倦怠感を見事に切り取り、太陽族映画、即不良映画という烙印を押されながらも興行的には大ヒットした作品で、わずか23日で撮り上げた強行撮影にもかかわらず、カメラ・アングル、編集の巧みさで、印象的な映像を作り上げていると思う。

とにかく、この作品は、日本のある時代の青春の残酷さを鮮烈に描いた、青春映画の傑作であり、主演の石原裕次郎の存在は常に際立っていたし、1950年代後半から1960年代にかけての日本の青春のシンボルは、石原裕次郎であったということを、再認識させる作品でもある。

原作・脚本は、裕次郎の実兄の石原慎太郎で、ブルジョワ学生の残酷さみたいなものが、非常によく出ていたと思う。

感動的な映画であることは疑う余地はないが、この青春像に対しては、ある種の違和感、反発を感じる人もかなりいると思う。

最終更新日:2024-08-24 02:00:05

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