P.N.「グスタフ」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2019-09-09
これ迄の「西鶴一代女」「雨月物語」「祇園囃子」で女性崇拝と人道主義の美徳を知らしめた溝口が、そのテーマをもっと広く普遍的な関心事として捉えて、森鴎外のこの歴史小説を映像化したのではないかと想像します。ここに、溝口健二の映画作家としての良心が完成されたと言えるのではないか。
中世の荘園制度や奴隷制度の背景の描写力は勿論、ラストの母子の再会まで人道主義の信念は見事な古典美を創り出している。このような美しい作品は、より多くの人たちに、そしてすべての若者に観られるべきであると思います。感動のラストシーンは、人の世の罪を見据えた作者の厳しい批判と情愛が悟りの境地で観るものを圧倒します。