忠直卿行状記 作品情報
ただなおきょうぎょうじょうき
浅水与四郎は幼少から忠直の側近く仕える忠臣で、忠直附きの腰元志津と祝言をあげた。忠直は内外からその英邁振りをうたわれ、特に武芸に熱心で、よく家中の若者を集めて槍試合などを行った。ある日、みずから白軍の大将となって出場した忠直は、紅軍の副将大島左太夫、大将小野田右近を突き伏せた。ところがその晩、忠直が奥庭に出た時、昼間の二人が話す「以前ほど、勝ちをお譲りするのに骨が折れなくなった」という言葉を聞いて愕然となった。翌日、急に槍試合を命じた忠直は、真槍で例の二人を傷つけてしまったが、二人はほどなく割腹して果てた。生まれてこのかた自分の身に注いでくれる賞讃は偽りであり、家臣の追従であることを知って深い懐疑にとらわれた忠直の行動は、それからというもの暴虐非道を極めた。人妻を犯したり、諫言する家臣を斬り棄てるなど別人のような乱行がつづいた。これは不信に包まれた忠直が人生の真実を求めてさまよう悲痛な姿であった。この行状は幕府の耳に入り、浅水与四郎は国家老本多土佐の命を受け、申し開きのため江戸へ発った。このことは忠直に対する不信であると正純に囁かれた忠直は、本多土佐を斬り棄て与四郎の妻志津を城中に監禁するが、志津はカンザシを片手に身を守った。江戸から帰った与四郎はこれを知って城中に忍び込み、短剣を持って忠直に躍りかかった。敏捷無類、太刀を執っては家中第一と言われた必死の与四郎を忠直は見事に取り抑えた。忠直は自分の腕が確かであることを知った。与四郎夫婦の真実の姿も知ることが出来たが、初めて人生の真実を知った時はすでにおそく、忠直は六十七万石の大名を去らねばならぬ時であった。母の清涼尼を上使として将軍家の上意は、領地召上げのうえ、その身は豊後府内にお預けという厳しいものであった。護送の役人に守られながら、配所へ赴く忠直卿の側には与四郎夫婦の姿があった。忠直の顔は流罪人とは思われぬほど明るかった。
「忠直卿行状記」の解説
菊池寛のおなじみの小説の映画化で、「疵千両」の八尋不二が脚色し、「不知火検校」の森一生が監督した。撮影も「不知火検校」の相坂操一。
公開日・キャスト、その他基本情報
キャスト |
監督:森一生
原作:菊池寛 出演:市川雷蔵 小林勝彦 山内敬子 丹羽又三郎 林成年 浦路洋子 三田登喜子 藤原礼子 中村鴈治郎 水谷八重子 千葉敏郎 加茂良子 清水元 荒木忍 須賀不二男 稲葉義男 石黒達也 三津田健 舟木洋一 香川良介 嵐三右衛門 志摩靖彦 南条新太郎 市川謹也 東良之助 葛木香一 山本弘子 井上明子 尾崎和枝 小町るみ子 金剛麗子 橘公子 芝田総二 岩田正 木村玄 松岡良樹 木口和己 |
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配給 | 大映 |
制作国 | 日本(1960) |
上映時間 | 94分 |
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