秋立ちぬ 作品情報
あきたちぬ
ある真夏の午後、小学校六年生の秀男は、母につれられて呆野から上京した。父を亡くし、銀座裏に八百屋を開くおじ常吉の店に身を寄せるためだった。挨拶もそこそこに、母の茂子は近所の旅館へ女中として勤めた。秀男は長野から持って来たカブト虫と淋しく遊ぶのだった。そんなある日、近所のいたずらっ子に誘われて、駐車場で野球をした秀男は、監視人につかまってバットを取られてしまった。遊び場もない都会の生活になじめぬ秀男の友達は、気のいいいとこの昭太郎と、小学校四年生の順子だった。順子は茂子の勤めている「三島」のひとり娘、母の直代は月に二、三回やって来る浅尾の二号だった。順子の宿題を見てやった秀男はすっかり順子と仲よしになった。山育ちの秀男は順子といっしょに海を見に行ったが、デパートの屋上から見る海は遠くかすむばかりであった。しかもそのかえり道、すっかりきれいになった母に会った秀男は、その喜びもつかの間、真珠商の富岡といそいそと行く母の後姿をいつまでもうらめし気に見なければならなかった。そのうえ、順子にやる約束をしたカブト虫も箱から逃げてしまっていた。しかも、更に悲しいことには、母が富岡と駈け落ちして行方不明になったことである。傷心の秀男と順子は月島の埋立地に出かけた。そこで見つけたキチキチバッタ、しかし、これも秀男がケガをしただけで逃げられてしまった。夏休みも終りに近づいたある日秀男の田舎のおばあさんからリンゴがとどいた。そしてカブト虫も。秀男は喜び勇んで家を飛び出し順子の家へ走ったが、浅尾の都合で「三島」は商売がえし、順子はいなかった。呆然とした秀男は、カブト虫を手に、かつて順子といっしょにいったデパートの展望台の上で、秋立つ風のなかをいつまでも立ちつくしていた。
「秋立ちぬ」の解説
「がめつい奴」の笠原良三のオリジナル・シナリオを、「夜の流れ」の成瀬巳喜男が監督した、都会の子の哀歓を描いたもの。撮影も「夜の流れ」の安本淳。東宝スコープ、パースペクター式立体音響。
公開日・キャスト、その他基本情報
キャスト |
監督:成瀬巳喜男
出演:大沢健三郎 乙羽信子 一木双葉 藤間紫 藤原釜足 賀原夏子 夏木陽介 原知佐子 加東大介 綿田仁 菅井きん 三田照子 河津清三郎 西条康彦 小西瑠美 三浦敏男 杉浦千恵 矢野間敬二 石黒照信 柏木純 北村公敏 園田あゆみ 草川直也 桜井巨郎 |
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配給 | 東宝 |
制作国 | 日本(1960) |
上映時間 | 79分 |
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