湖の琴 作品情報
うみのこと
若狭の山奥の貧農の家に生まれた栂尾さくは、糸とり女として親許を離れはるばる賤ケ岳の西山集落へやって来た。そこは三味線糸や琴糸の名産地で、そこで生まれる糸は人間の悲しみや喜びの涙で出来たという余呉湖の水で洗われるから、いい音色を出すと言われていた。さくの働く家の主人喜太夫もその妻鈴子も同僚たちも皆親切であった。それに同郷の男衆松宮宇吉がいて、難しい仕事を手にとるように教えてくれた。さくも宇吉の好意に感謝し、またふたりはいつしか慕いあうようになっていた。ふたりの想いが静かに燃えあがろうとしていた矢先、宇吉が兵役のため金沢へ行くことになった。さくは喜太夫夫妻の思いやりもあって、入営の日宇吉を駅まで送った。宇吉が去って間もなく、京都の有名な長唄師匠桐屋紋左衛門が糸とりの見学に来た。紋左衛門は、女衆に混って下働きに出たさくの観音像に似た美しさにうたれ、「夕顔観音」と題して曲に収めた。その上さくを京都に連れて帰りたいと言い出した。さくは彼の突然の申し出に、いつかは西山に戻ってくる宇吉のことを思い躊躇したが、喜太夫夫妻の勧めもあって京都行きを決意した。紋左衛門の三味線の稽古は厳しかったが、不断はとても親切であった。そして宇吉が兵役を解かれて帰って来た。彼は休日を利用してはさくを京都に訪ね、さくも宇吉に逢える日を楽しみにしていた。そのことが紋左衛門には堪えられず、ある夜ついに師弟の間柄を越えてしまった。さくは突然西山の宇吉の前に現われると、何も言わずに泣き出した。その夜さくは宇吉と結ばれると姿を消した。さくは宇吉が贈った琴糸で自殺していた。宇吉はさくの体を清めて背負うと余呉湖へ向った。夕焼けが消え月が湖面に輝いていた。宇吉はさくと一緒に身を投げたのである。
「湖の琴」の解説
水上勉の原作を「沓掛時次郎 遊侠一匹」の鈴木尚之が脚色し、「冷飯とおさんとちゃん」の田坂具隆が監督した文芸もの。撮影はコンビの飯村雅彦。
公開日・キャスト、その他基本情報
キャスト |
監督:田坂具隆
原作:水上勉 出演:佐久間良子 中村賀津雄 中村鴈治郎 山岡久乃 千秋実 木暮実千代 悠木千帆 田中邦衛 岡田千代 宮園純子 花澤徳衛 鳳玲子 浜村純 矢奈木邦二郎 岡安喜三七 那須伸太朗 大月正太郎 村居京之輔 東龍子 風見章子 林三恵 波千鶴 高松錦之助 島田秀雄 浪花五郎 高橋漣 佐藤綾子 美松艶子 京町かおる 楠三千代 |
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配給 | 東映 |
制作国 | 日本(1966) |
上映時間 | 130分 |
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ユーザーレビュー
総合評価:5点★★★★★、1件の投稿があります。
P.N.「PineWood」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2017-02-08
以前、琵琶湖周遊の旅で湖畔の十一面観音を御寺で観ました。その時確か本編のスチール写真が貼られていてロケ現場である表示が有った様に記憶していた。その事を名画座で鮮明に想い出した…。田坂監督作品はフイルムセンターの特集等でも観ていましたが、この異色作品は見逃していた。琴の師匠の妄想シーンはまるで表現主義ではないか!ブラックスワンを先取りした様にも見える…。官能的な美の佐久間良子もお見事!