P.N.「pinewood」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-10-21
🛶西田敏行訃報の新聞記事を読むと映画釣りバカ日誌の名コンビの三國連太郎の本篇観賞のリスペクトなエピソードが出て来た。前レビューにも在る名演振り。先のコロナ禍では俳優の生活を守る為に立ち上がった先頭に居た西田敏行の姿も想い出され
きがかいきょう
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🛶西田敏行訃報の新聞記事を読むと映画釣りバカ日誌の名コンビの三國連太郎の本篇観賞のリスペクトなエピソードが出て来た。前レビューにも在る名演振り。先のコロナ禍では俳優の生活を守る為に立ち上がった先頭に居た西田敏行の姿も想い出され
犯人を演ずる三國連太郎の凄まじいまでの迫力を持った告白の熱演が展開される。
まさに日本映画史に残る、圧倒的な熱演に唸らされる。
執念の刑事を演ずる伴淳三郎もいぶし銀のような演技で、一世一代の好演だと思う。
そして、恩を忘れなかった哀しき娼婦役の左幸子も、したたかな演技を繰り広げており、芸達者たちの演技合戦も実に見ものだ。
また、伴淳三郎とコンビを組む、若き刑事に高倉健が扮しているが、東映で任侠の男を演じていた頃、健さんは自分の代表作はと問われ、この作品を挙げていたそうだ。
重量感たっぷり、見応えもたっぷりの、日本映画史に残る秀作だと思う。
犯人と思しき男は、京都の舞鶴で事業家として成功している。
だが、名前は違っているし、犯行を実証するものもない。
どうやって、犯人を暴いていくのか——-。
そこがクライマックスとなる。
事件は、犯人が下北半島に上陸して一夜を共にした女の出現で、解決へと向かう。
女はその時、犯人から大金をもらったことに恩義を感じ、その時の礼を言おうとして、犯人に近づき殺される。
女の一途な純な心は、自らを守ろうとする男のエゴで消されていく。
のっぴきならないところに追い詰められていく男と女の関係を、内田吐夢監督はダイナミックに描いていく。
犯人は逮捕される。悪は憎むが、悪人の中にも人間の善なる心の一片を知りたいと、事件を追い続けてきた刑事に、犯人はその心情を吐露する。
この映画「飢餓海峡」は、映像実験もあり、力量観あふれる運命劇で、壮大なスケールの人間ドラマの秀作だ。
水上勉の同名小説を、鈴木尚之がシナリオ化し、内田吐夢監督が映画化したものだが、内田吐夢監督は、その持てる力をフルに発揮し、16ミリフィルムを拡大して、実感を強調するなどの映像的な実験も試みて、力量観あふれる運命劇を作り上げている。
物語は、1946年、台風が青函海峡を通過中、一瞬の晴れ間を台風の通過と間違えたため、青函連絡船が転覆し、500人余りの人が死亡した”洞爺丸事件”から幕を開ける。
台風が吹き荒れる中、函館に近い岩内町では大火が発生し、質屋一家が殺害される。
犯人は、洞爺丸事件のごたごたに紛れて、内地へと逃亡したのではとみられた。
執拗に犯人を追う刑事を通して、物語は推理ドラマ風に展開していく。
そして、事件発生から犯人逮捕までには7年の歳月が流れる。
その間に、人間の在り様は大きく変わっていく。
その変わり様と変わらぬ人間の心を、内田吐夢監督はじっくりと凝視していく。
モノクロームの粗い粒子の映像で魅せた本篇,また1988年のフジテレビ版男と女のMystery枠のドラマ飢餓海峡。此方は仲代達矢,若村麻由美,藤村志保,萩原健一共演のカラー作品。捜査への執念も際立つ
飢餓海峡をまた観た。初めて観たのは学生時代だった。あれから何十年もの歳月が流れた。あらためてこの映画を観て、とても感動した。これは青函連絡船・洞爺丸が台風のため、転覆し、多くの犠牲者を出した実話に基づいたものだが、見事に人間というものを追求していると思ったからだ。原作の水上勉さんも監督の内田吐夢さんもほんとに素晴らしいと思った。これは社会派ミステリー映画の傑作と言うべきだろう。
私は学生時代、古い映画館で飢餓海峡を観た。三國連太郎さんの演技が素晴らしかった。貧困をテーマにした重く、深い映画である。
左幸子の見事な名演、三國連太郎の見事な熱演、伴淳三郎の見事な力演。三人のそれぞれの味わい深い演技を、内田吐夢監督はストレートに焼き付けず、敢えて荒々しく陰惨な質感のフィルムに映し出し、土着的な重苦しさを強調したドラマを創作している。日本映画にあって、最も異質な映像の表現にある独立した名作です。終末にかけての、人は何を信じて生きて行けば良いのか、人と人の間に結ばれる信頼とはいったい何なのかが、ぐんぐん迫りくる重量感が素晴らしい。この大作に誠心誠意捧げた内田監督の作家魂が、主演俳優三人に乗り移ったかの迫力に圧倒されます。