P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- なし
- 投稿日
- 2024-07-03
※このクチコミはネタバレを含みます。 [クリックで本文表示]
彼が演じている主人公の名前は、平均(たいら・ひとし)。
サラリーマンは気楽な稼業とばかりに、口八丁手八丁のとても平均的な日本人とは思えない調子のいい男だが、いやまてよ、猛烈サラリーマンなんてのより、案外こっちの方が”日本人の実像”に近いかな? と一瞬思わせるだけの微妙な皮肉になっていると思う。
この平均という男、日本的な終身雇用制なんてことなど、どこ吹く風とばかり、いろんな会社にひょいひょいと潜り込んで、世間を渡ってきたらしい。
行く先々で、とことんいい加減にふるまうが、世の中は幸せでいっぱいみたいな笑顔と、悪びれない”ゴマスリ”の上手さで、みんながあっけにとられているうちに、どんどん出世してしまうのだ。
なにしろ、まさか、と思う間もないスピードでリズムに乗って意表をつく裏切りなどを楽しそうにやってしまうのだから恐れ入る。
しかも、この植木等という俳優が、素顔ではいたって律儀な真面目人間なんだから、そのギャップも面白い。
とにかく、突撃演出で知られる個性派監督の古沢憲吾がスピーディで、歯切れの良いパンチの効いた演出を見せていて、原案・脚本の田波靖男、キレの良い演技を披露した植木等、それぞれの傑出した才能が結集して生まれた”奇跡的な作品”だと言わざるを得ない。