黒の奔流 作品情報

くろのほんりゅう

ある殺人事件の裁判が始まった。事件とは多摩川渓谷の旅館の女中、貝塚藤江がなじみの客を崖から突き落した、というのである。しかし藤江はあくまでも無罪を主張した、が、状況的には彼女の有罪を裏付けるものばかりだった。この弁護を担当したのが矢野武である。矢野はこの勝ち目の薄い事件を無罪に出来たら一躍有名になり、前から狙っている弁護士会々長・若宮正道の娘朋子をものにできるかもしれない、という目算があったのである。弁護は難行したが、藤江に有利な新しい証人が現われ、矢野は見事、無罪判決を勝ら取る。そして矢野の思惑通り、マスコミに騒がれるとともに、若宮と朋子の祝福を受け、若宮は朋子の結婚相手に矢野を選ぶのだった。一方、藤江を自分の事務所で勤めさせていた矢野は、ある晩、藤江を抱いた。藤江は今では矢野への感謝の気持ちが思慕へと変っていたのである。やがて藤江は矢野が朋子と結婚するということを知った。藤江が朋子のことを失野に問いただすと、矢野は冷たく「僕が君と結婚すると思っていたわけではないだろうね」と言い放ち、去ろうとした。そこで藤江は、あの事件の真犯人は彼女であること、もし矢野が別れるなら裁判所へ行って全てを白状すると逆に矢野を脅迫する。矢野は憔悴の夜を送った。藤江はやりかねない。それは矢野の滅亡を意味する。やがて矢野は藤江に対して殺意をいだく。翌日、矢野は藤江に詫びを入れ、旅行に誘うと、藤江は涙ながらに喜び、数日後、富士の見える西湖畔に二人は宿をとった。藤江は幸福だった。翌朝、矢野は藤江を釣に誘った。人気のない霧の湖上を二人を乗せたボートが沖へ向った。矢野が舟を止めると矢野の殺意には既に気が付いていたと藤江がつぶやいた。矢野は舟底のコックを抜いた、奔流のように水が舟に入って来る。矢野が脱出しようとした瞬間、藤江の体が矢野の上にのしかかり、矢野の悲鳴が上った。「先生を誰にも渡さない!」藤江の頬には止めどなく涙が流れた。折りしも流れて来た濃い霧の中に慟哭とともにボートと藤江と矢野の姿は消えていった。

「黒の奔流」の解説

殺人容疑で法廷に立たされた薄幸の女と彼女を無罪とするのに成功した弁護士との愛憎を描く。原作は松本清張の小説『種族同盟』の映画化。脚本は国弘威雄、監督は脚本も執筆している「ポルノギャンブル喜劇 大穴中穴へその穴」の渡辺裕介、撮影は「剣と花」の小杉正雄。

公開日・キャスト、その他基本情報

公開日 1972年9月9日
キャスト 監督渡辺祐介
原作松本清張
出演山崎努 岡田茉莉子 谷口香 松村達雄 福田妙子 松坂慶子 中村伸郎 中村俊一 穂積隆信 玉川伊佐男 佐藤慶 河村慶一郎 大久保敏男 高木信夫 岡本茉利 菅井きん 金子亜子 伊藤幸子 水木涼子 藤田純子 秩父晴子 園田健二 岡本忠行 江藤孝 谷村昌彦 高畑喜三
配給 松竹
制作国 日本(1972)
上映時間 90分

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ユーザーレビュー

総合評価:5点★★★★★、1件の投稿があります。

P.N.「pinewood」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2019-02-18

本編は残念乍,未見だがテレビ・ドラマの船越英一郎主演版で視聴…。冤罪事件の被告人を演じる星野真里の迫真の演技に魅せられて仕舞う!其の恐るべきファム・ファタール振りが如何にも松本清張作品の醍醐味で…。妻役の賀来千香子,弁護士事務所勤務員の黒谷友香も好演した。

最終更新日:2023-08-12 02:00:03

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