博多っ子純情 作品情報
はかたっこじゅんじょう
九州博多の夏は祇園山笠ではじまる。迫山の日、六平は足を怪我した父に変って、生まれて初めて山笠をかついだ。途中、山笠の早さについて行けず、転んだところを隣に住む憧れの青葉さんに助けられるというサエない場面もあったが、とにかく山笠を担いで男になるという博多っ子の伝統を六平も守ったわけだ。六平、十五歳の夏である。六平は級友、阿佐道雄、黒木真澄と集まっては、女性の秘部について話し合っていた。ある夜、中洲のバーで飲んでいる父に、忘れた財布を届けた六平は、そこで父から初めて酒を飲まされる。その帰り道、同じクラスの小柳類子と会った。類子に手を握られてオドオドしながら歩いている六平に、高校生たちが絡んできた。類子の手前、お土産に買った西瓜を振り回して立ち向かっていると、先輩の穴見が通りかかり、六平を助けた。しかし、穴見にビッタリと寄りそっている青葉を見て、六平はガッカリである。数日後、類子と母が西瓜を持って六平の家に来た。その事については誰にも話さなかった六平は、暫くして類子を呼び出し、口 論となり、とうとう彼女は泣きだすのだった。謝る六平に類子はキスして欲しいと言い、六平は彼女の頬にキスをするのだった。六平の毎日は、床屋の娘に迫られたり、道雄の母の美しさに憧れ、青葉の弾くピアノの音に酔い、ポルノ映画に行って断わられたりといった悶々とした日々の連続である。しかし、そんな六平にも毅然とした男らしさがあり、番長の無法松でさえ一目置いていた。ある日、六平は持ち前の正義感から、万引をしている五中の生徒を咎めたことが原因で、後日袋叩きに合った。それを知って激怒した道雄と真澄は五中の生徒達に決闘状を叩きつけた。定刻、福岡城跡に行くと、何と六、七十人がチェーン、木刀を持って押し寄せて来た。更に驚いたことに、無法松が多勢の仲間を連れて助けに来た。類子が無法松に応援を頼んだのである。対峙する五中と無法松の仲間……。無法松の「ヤレ!」の合図で、福岡城跡は修羅場と化した。これは死人が出ると驚いた六平は、持って来たモデルガンをぶっ放すや、素頓狂な声で歌い出した。“祝い目出たのォ若松さまよォ…博多ではこの歌が出ると、何事も終らなければならないという風習がある。失禁しながら歌う六平。五中の番長が無法松に、「お前、いい後輩を持ってるな!みんな一緒に歌え!」。二つに分れて歌いながら全員帰っていく。一人ポツンと残っている六平に無法松が、あそこにいる女が教えてくれたんだと指さした。そこには、類子が心配そうに、六平を見つめている姿があった……。
「博多っ子純情」の解説
時には子供扱いされ、時には大人としての白覚を求められる年頃である男子中学生達の生活を、目ざめはじめた性、今だ知らぬ女性の神秘への興味などを中心に描く。長谷川法世の『漫画アクション』に連載中の同名の漫画を映画化したもので脚本は石森史郎と長谷川法世の共同執筆、監督は「女高生 天使のはらわた」の曽根中生、撮影は「ピンクサロン 好色五人女」の森勝がそれぞれ担当している。
公開日・キャスト、その他基本情報
公開日 | 1978年12月2日 |
---|---|
キャスト |
監督:曽根中生
原作:長谷川法世 出演:光石研 小屋町英浩 横山司 松本ちえこ 立花美英 赤木艮次 小池朝雄 春川ますみ 上月左知子 田崎潤 伊佐山ひろ子 本間進 長谷川法世 佐藤蛾次郎 桂米丸 園佳也子 児島美ゆき 渡辺とく子 野崎英則 陶隆司 春江ふかみ なぎらけんいち 岡本麗 桂歌丸 宮下順子 竜虎 小畠絹子 |
配給 | 松竹 |
制作国 | 日本(1978) |
上映時間 | 94分 |
ユーザーレビュー
総合評価:4点★★★★☆、1件の投稿があります。
P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2025-04-17
この映画「博多っ子純情」は、長谷川法世が「週刊漫画アクション」に連載していた人気漫画の映画化ですが、異才・曾根中生監督の歯切れよく、気風よく弾ける演出が素晴らしい作品だ。
性に目覚め、いまだ見も知らぬ女性の神秘に興味を抱く、男子中学生3人組が、憧れの女性とのデートを夢見たり、不良に囲まれた同級生をカッコ良く助けようと意気がったりする様を、コミカルに誇張を込めて描いた痛快作だ。
この映画は、威勢はいいが、どこかとぼけている博多弁のセリフが作品の基調をなし、今や日本映画界の名バイプレイヤーのひとりになった、若き日の光石研扮する郷六平をはじめとする中学二年の男子中学生3人組が、生まれて初めて山笠を担いで男をあげたり、初恋のお姉さんに悶々としたり、クラスメートの女の子(松本ちえこ)にキスをせがまれたり、夜道で高校生に絡まれて喧嘩したり-----といった印象深いエピソードがきびきびと展開していく。
そして、何といってもこの映画の白眉は、六平の正義感を発端として三人組が、別の中学の大勢の生徒と決闘するはめになり、三人組に加勢する番長の一団と福岡城址で大乱闘になる終盤だ。
これが、六平の失禁しながらの機転で、無血の解決をみることになるんですね。
この決闘シーンは、鈴木清順監督の「けんかえれじい」を彷彿とさせ、勢いと余韻に満ちたユニークな戯作タッチを全篇に行き渡らせた「博多っ子純情」は、曾根中生監督の登場人物たちに注ぐ愛情が素晴らしく、彼の演出の頂点をなすものだと思いますね。