P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-06-12
※このクチコミはネタバレを含みます。 [クリックで本文表示]
中島貞夫監督の「沖縄やくざ戦争」は、本土復帰を目前に繰り広げられる、沖縄の暴力団抗争を描いた実録風活劇だ。
1971年の末、沖縄やくざの大城派と国頭派は、本土復帰による本土系暴力団の侵攻に備えて、手を結ぶ。
だが、国頭派で内紛が起こり、中里(松方弘樹)一味は分裂して、国頭(千葉真一)の部下・石川(地井武男)らと抗争。
国頭は、兄弟分の中里と和解するべく、中里の妻(新藤恵美)にその意志を伝える。
しかし、中里の部下(渡瀬恒彦・尾藤イサオ)が、国頭を射殺。
中里対石川の血みどろの闘いが深まり、石川も殺される。
国頭派の壊滅で、大城派は漁夫の利を占め、本土組織の梅津(梅宮辰夫)との交渉を進める。
中里は、沖縄を本土に売る者たちを抹殺しようとするが、無惨に殺されてしまう。
ラスト、突堤で中里が、雨あられの銃弾で惨殺されるシーンは、悲壮で衝撃的だ。
物語は、本土復帰による沖縄の悲惨さを、単なる活劇を越えて訴える。 しかし、そうしたいわゆる沖縄問題にのみ、この映画は収斂していかない。 むしろ国頭が、琉球拳法の舞いを、パッショネートに踊るシーンなど、画面としては安っぽい。 殺し合い、死に至る男たちは、共感をそそるのではなく、ひたすら闘いの生理を告げる。 松方弘樹の醒めた殺意、渡瀬恒彦や室田日出男などの狂気の熱演が、それを描き出す。 いうなれば、中島貞夫監督は、単なる実録風の活劇を越え、さらに政治的な図式を越えたところに、闘いの生理が衝撃力を持つ活劇を生み出したと思う。