P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2024-05-14
鈴木則文監督の「少林寺拳法」は、日本少林寺拳法の開祖・宗道臣の伝記映画の体裁をとった、1970年代東映のバッドテイスト溢れる快作だ。
昭和22年。道臣は四国の多度津で、少林寺拳法の道場を開く。
弟子の一人が、当時二十歳の志穂美悦子で初々しく、とても可憐でしたね。
初心者でぎこちなく拳をふるっていたのが、ヤクザとの立ち廻りで、鋭い動きを見せるのには笑ってしまった。
「出来る」のだから、仕方ないですよね。
道臣と腐れ縁の愚連隊のボスが、小池朝雄。多度津のヤクザの組長が、名和宏。
二人が組んで、長屋の人たちを追い出そうとする。
そのイザコザで、道臣とは闇市以来の知己である大滝(佐藤允)が殺され、怒りの道臣が、単身、二人のもとに殴り込みをかける。
完全に、ヤクザ映画のパターンである。
名和宏は、道臣に両腕を、ありえないような形に捻じ曲げられる。 小池朝雄は、顔面に鉄拳を食らって、歯茎も付いた状態で歯を口からポロポロこぼす。 「こんな法なら、俺が破ってやる」とか、「法など俺には関係ねえ」等々、宗道臣は、アナーキーなセリフを繰り返す。 「わしら、美味いもん食うてよ、綺麗な女抱くために生まれてきたんやないの!」という、日本映画史上屈指の名セリフを叫んだ大友勝利(深作欣二監督「仁義なき戦い 広島死闘編」)や、血盟団事件のテロリスト・小沼正(中島貞夫監督「日本暗殺秘録」)等、アナーキズムを体現したキャラクターを演じる時、千葉真一は光り輝く。 ドスもピストルも、全て素手で跳ね返す。 少林寺拳法は、無敵なのだと思わせる、千葉真一のアクションが素晴らしい。 しかも、ただただ、美しい。 無軌道に突っ走る、鈴木則文映画でありながら、主人公・宗道臣には、品格が感じられる。 武道家でもある千葉真一の宗道臣に対する、深い敬愛の念が、演技に滲み出ているからだろう。