P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2023-11-18
「青春の蹉跌」は、石川達三の同名小説の映画化だが、野望を軸に展開する原作に比べ、長谷川和彦の脚色、神代辰巳の演出は、1970年代前半の虚脱感が漂う、全く印象の違った作品になっている。
カットバックを多用し、説明を極力排した映像に、製作当時の時代背景が滲み出ていて、ディテール描写に独特な魅力があった。
例えば、主人公の萩原健一が、道を歩いている時、横にある鉄製の手摺をフーッと触っていくと、ガタガタガタと音がする。
そういう何気ない描写に現実感が出ていて、神代辰巳監督の映像感覚の鋭さを感じさせる。
青春のある図式というものを、上手く活かして、最後の結末も奇麗な収まりかたであったと思う。