P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- なし
- 投稿日
- 2024-06-28
そして、十朱幸代、秋吉久美子などの女優陣の絢爛さもさることながら、獣じみた精気を発散させる小林稔侍をはじめ、遠藤太津朗、今井健二といった東映の男優が、いいところを見せてくれるのが嬉しい。
ただ、萩原健一だけが、当時、組んでいた神代辰巳監督作品でのイメージが強いせいか、躊躇したりする時に現代風の印象が抜けきれず、違和感を感じさせたのが残念だ。
よぎしゃ
総合評価4.67点、「夜汽車」を見た方の感想・レビュー情報です。投稿はこちらから受け付けております。
そして、十朱幸代、秋吉久美子などの女優陣の絢爛さもさることながら、獣じみた精気を発散させる小林稔侍をはじめ、遠藤太津朗、今井健二といった東映の男優が、いいところを見せてくれるのが嬉しい。
ただ、萩原健一だけが、当時、組んでいた神代辰巳監督作品でのイメージが強いせいか、躊躇したりする時に現代風の印象が抜けきれず、違和感を感じさせたのが残念だ。
※このクチコミはネタバレを含みます。 [クリックで本文表示]
思い出の紅葉の宿で、今は妹の亭主になっている昔の男にすがりつき、身もだえし、ついに再び男女の関係になってしまう場面、どうしようもなく抑えきれぬ気持ちがほとばしり出る。
任侠映画の衰退以来、処を得ていない感のあった山下耕作監督だが、戦前の市井を舞台に男と女の物語を堂々と描く姿勢に立って、長大なドラマを少しの空疎さも感じさせずに織り成していると思う。
昭和10年代の高知の町が、くっきりと浮かび出てくるし、当時の空気も見事に再現されているように思える。
そしてそれが、単に歴史の再現にとどまらず、その時代ならではの激しい思いを抱えて生きた女の半生を、観る者にも鋭く突きつけてくる。
要所要所に挿入される夜汽車のショットが、絶妙のアクセントになっていて、久し振りに山下耕作監督の魅力を堪能させられた。
「鬼龍院花子の生涯」(1982)、「陽暉桜」(1983)、「櫂」(1985)と続いた宮尾登美子原作による”土佐もの”シリーズは、高田宏治脚本、五社英雄監督で作られてきた。
それが、1987年の「夜汽車」は、松田寛夫、長田紀生コンビの脚本に山下耕作監督という顔合わせで作られているが、だいぶ色合いの違うものになっていると思う。
激しさはできるだけ抑えられ、男と女の情感がじんわりと盛り上がり、次第に大きなうねりを起こしていく様子が、さりげなく、それでいて骨太に語られていく。
遊郭を芸者たちがねり歩く描写ひとつとっても、五社英雄監督の演出が、あでやかに着飾った女たちが、集団で移動していくダイナミズムを感じさせたのに対し、山下耕作監督の演出は、踊りのような、さばけた見のこなしで女たちを歩かせ、たおやかな魅力を画面にあふれさせる。
十朱幸代のヒロインは、男まさりの気の強さを見せ、指までつめてみせても、あくまで女だ。
夜汽車をまた観た。やはり凄い映画だと思った。この映画で萬田久子さんが出演されている。彼女はとびっきりの美人だ。大好きだ。今は亡き母と同じ名前だったから昔から気になっていた女優さんだ。この映画は素晴らしいの一言に尽きると思う。
夜汽車を観た。この映画を観てから私は人生という夜汽車で見知らね人々と乗り合わせどこに行くのだろうと思うようになった。これは愛と憎しみが交錯する映画だが、人生というものをじっくり考えさせてくれると思う。