P.N.「グスタフ」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2019-10-14
ネオレアリズモを代表するイタリア映画の歴史的名画。戦後の荒廃した庶民の生活を写実した、ありのままの記録。ベッドシーツを質草にして自転車を質請けする場面の天井まで積み上げられたシーツの山、自転車や部品が並ぶ市場、サッカー場の周りに置かれた夥しい数の自転車、占い師に縋るエピソード等々。戻った自転車を手入れする幼い長男が傷を見つけて憤慨する細微な描写もいい。喧嘩別れした後の息子の安否に狼狽する父の心情と、レストランで食事する金持ちと比べて味わう親子の惨めさが、切実極まりない。そして、追い詰められた父が取った有り得ない行為を凝視する瞬間の長男の眼が、全てを物語る残酷な結末。子供の記憶に刻まれた親の姿が、その時代と社会を写し一生の心の傷になる。泣きながら寄り添う長男の手を握り絞めてから、恥辱に耐え切れず涙する父。ラストシーンに、これほど言葉を失うものは無い。