カチアの恋 作品情報
かちあのこい
ロシア、ロマノフ王朝第十六代のアレグザンドル二世は、一八五五年に即位したが、善政を布いて民生を厚くしようとの志を抱き、一八六一年にいたって農奴解放令を出した。ところが専制を支持する貴族官僚はこれを喜ばず国粋を守ると称して徒党を組んで、この皇帝の革新政策の施行を妨害した。たまたま六二年、皇帝に危害を加えようとする者が出たのに乗じ国粋党一派は大弾圧政策を採ることを、アレグザンドル二世に強要した。即ち、出版・集会の自由を束縛し、民主主義者をシベリアへ送り、特別裁判制を復活して政治犯を機密に処刑し、大学においては科学研究を禁じたのである。これは若い皇帝の意に反することであった。皇帝はロボットにすぎない。人間としての皇帝に許されたのは恋愛だけであった。貧乏貴族の娘カチアの美貌と純情は、アレグザンドルの心をとらえた。ままにならぬ政治は官僚にゆだねて、彼は愛人カチアとともにパリに遊んだ。花やかな自由の都で、アレグザンドルは初めて人間らしい悦びを知ることが出来た。カチアも孤独な皇帝を愛し慕った。一方、西欧の文化と自由にあこがれる一部の青年貴族や学徒はひそかに虚無党を組織した。その党員中の熱血漢が皇帝を狙撃して失敗した事件が起ると、政府は純然たる専制を布き、虚無党を圧迫した。この結果テロリストの潜行運動は却って激化した。官僚は国民の関心を外に向けようとして、ロシアはトルコと戦火を交えた。露土戦役は大勝に終って有利な講和条約を結んだが、イギリスとオーストリアが横やりを入れ、ベルリン会議で大訂正を加えられた。ロシア国民は憤激し政府は非難攻撃され、テロリストは皇帝殺害の宣言をした。皇帝は三度爆弾を見舞われたが、危難を脱しカチアの愛ぶになぐさめられるのであった。今はカチアは側室としてではなく、皇后となる日も近かった。皇帝も革新政策を布くべき時期が来たのを知り、立憲政治採用の布告をすることとなった。ところがその前日、近衛兵の観兵式に臨んでの帰途、虚無党員の投げた爆弾のため、アレグザンドル二世は非業の死をとげた。カチアの悲嘆ははなはだしかった。しかも正室とならなかったカチアは、宮廷にあることを許されず、傷心を抱いて愛人の棺側から追われたのであった。
「カチアの恋」の解説
「ルイ・ブラス」「うたかたの恋」のダニエル・ダリューが「旧友」「情熱の航路」のジョン・ローダーを相手に主演する映画で、リュシル・デュコオのストーリーをジャン・ジャック・ベルナールと「海の牙」「ジブラルタルの鮫」のジャック・コンパネーズが脚色して台詞をつけ「港の掠奪者」「被告立て」「サムソン」等の老匠モーリス・トゥールヌールが監督し、「六人の最後の者」「南方飛行」のロベール・ルフェーヴルが撮影した。助演は「厳窟王」「聖バンサン」のエーメ・クラリオン「厳窟王」のマリー・エレーヌ・ダステ、シャルロット・リーズ、ジャンヌ・プロヴォー等である。音楽はヴァル・ベルグ作曲で、アルンスタムとギイ・ド・ガスチーヌの装置、ビリンスキーの衣装など、スタッフはそろっている。
公開日・キャスト、その他基本情報
キャスト |
監督:モーリス・トゥールヌール
原作:リュシル・デュコオ 出演:ダニエル・ダリュー ジョン・ローダー シャルロット・リーズ エーメ・クラリオン ジャンヌ・プロヴォー マリー・エレーヌ・ダステ |
---|---|
制作国 | フランス(1938) |
ユーザーレビュー
レビューの投稿はまだありません。
「カチアの恋」を見た感想など、レビュー投稿を受け付けております。あなたの映画レビューをお待ちしております。