ホフマン物語 作品情報
ほふまんものがたり
〔プロローグ〕十九世紀のニュールンベルグ。オペラ劇場では美しいバレリイナのステラ(M・シアラー)が官能的な「蜻蛉の踊り」(相手はE・オードラン)を踊っている。彼女は、詩人ホフマン(R・ラウンズヴィル)に夢中で、彼を部屋へ誘うため鍵を従僕に託したが、ステラに恋するリンドルフ(R・ヘルプマン)は賄路でそれを奪った。同じ頃居酒屋ルーサーで騒いでいる学生の中にホフマンが現れ、請われるままに往時の情事を語り出した。 〔第一場・オリンピアの物語〕パリの人形師スパランザーニ(L・マシーヌ)は見事な少女の人形(M・シアラー)を作り上げた。発明狂のコペリウス(R・ヘルプマン)はスパランザーニから小切手を受取って人形に眼を入れてやった。来合せた学生ホフマンはコペリウスから買取った眼鏡をかけて見ると、人形は活けるが如き美少女となっていた。彼は夢中で少女と踊り、思いのたけを打明けたが、踊りすぎて眼鏡をこわしてしまった。一方コペリウスはスパランザーニの小切手が不渡りなのを怒り人形を粉々に砕いた。夢から醒めたホフマンは、涙ながらに人形の首をかき抱いた。 〔第二場・ジュリエッタの物語〕ヴェニスのあで人ジュリエッタ(L・チェリーナ)は悪魔ダペルトゥトに繰られていた。貴族シュレミル(L・マシーヌ)は自分の影まで悪魔に売飛ばしてジュリエッタの歓心を得ようとしていたが、彼女の愛は既にさめていた。彼女は悪魔にそそのかされてホフマンに誘惑の手を伸し、彼は友人ニクラウス(P・ブラウン)の諌めもきかず、自分の影を売って彼女に恋してしまった。シュレミルが持っている彼女の部屋の鍵を奪うため、ホフマンは彼と決闘し、悪魔の助けで相手を倒した。しかしかけつけた部屋に彼女はいず、当人は悪魔とゴンドラの上で歓をつくしているのだった。怒ったホフマンが鏡に鍵を投げつけると、不思議や影が戻って来た。 〔第三場・アントニアの物語〕オペラ歌手アントニア(A・エヤアス)は肺病のために、父クレスペル(M・ウィース)から歌うことをとめられていたが、恋人ホフマンは彼女に歌をせがんでやまなかった。医師ミラクル(R・ヘルプマン)は彼女の母も殺した男だが、歌えば癒るとアントニアをそそのかしたので、彼女は天国の母と声を限りに二重唱をうたい、ホフマンがかけつけた時はこときれていた。彼は恋人が病いの身であることを知らなかったのだ。 〔エピローグ〕語り終えたホフマンは、ミラクルやダペルトゥット、コペリウスはいずれも恋敵リンドルフの変身に他ならず、オリンピア、ジュリエッタ、アントニアはすべてステラの面影に通うことに気付いた。弾む心で駆付けたステラは、机の上に酔い伏っているホフマンを見た。リンドルフは彼女にホフマンが既に老いた詩人であることを悟らせ、世の歓楽へと連出した。
「ホフマン物語」の解説
「天国と地獄」などで知られる十九世紀フランスのオペレッタ作曲家ジャク・オッヘンバッハの遺作幻想的歌劇「ホフマン物語」の色彩映画化。原作に忠実に全篇オペラの形式を踏襲し、唯ヒロインのステラをオペラ歌手からバレリーナに変えてバレエ場面を豊富に配してある。原曲の作詞はジュール・バルビエ(グノー作曲「ファウスト」の作詞など)でこれを現代英国の劇作家・作曲家・俳優のデニス・アランデルが英訳した台本を使用。製作・脚色・監督は「赤い靴」「黒水仙」のマイケル・パウエルとエメリック・プレスバーガーの協同。撮影のクリストファー・チャリス、装置のハイン・ヘックロス、音楽指揮のサア・トマス・ビーチャム(ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラ演奏)はすべて「赤い靴」と同様。出演者はバレエ界からモイラ・シアラー、ロバート・ヘルプマンらの「サドラス・ウェルズ舞踊団」員、レオニード・マシーン、リュドミラ・チェリーナ(以上「赤い靴」)らの他、この作品の振付を担当したサドラス・ウェルズのフレデリック・アシュトン、故エドモン・オードラン等。歌劇界からはニューヨーク中央歌劇団のテナア、ロバート・ラウンズヴィルとソプラノのアン・エヤアズが演技面にも出演、他にドロシイ・ボンド、マルゲリータ・グランディ、モニカ・シンクレア、ブルース・ダーガヴェル、オーウェン・プラニガン、グラハム・クリフォードらが陰で声の出演をしている。合唱はサドラス・ウェルズ合唱団。純粋の演技面には、「渦巻」のパメラ・ブラウン、モーゲンス・ウィートらが出演する。2019年4月2日より再上映(配給:リスキット)。
公開日・キャスト、その他基本情報
ユーザーレビュー
総合評価:5点★★★★★、1件の投稿があります。
P.N.「pinewood」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2022-08-14
画面を完全コントロールしている点で舞台の映像化とは言えストップ・モーション・アニメーションの要素や歌舞伎に影響されて構築されたエイゼンシュテイン監督の〈イワン雷帝〉にも共通する劇映画だと言える