わが心は君に 作品情報
わがこころはきみに
一九一〇年、ウィーン郊外の田舎宿に、貧しい若い作曲家ルディが下宿をしていた。宿の主婦ハッティの姪グレテは彼と兄妹のように親しかった。或日、若い将校等と一緒にここへ訪れたオペラのプリマドンナ、マリアはルディの才能を認め、彼女の後援者であるライナルト殿下の邸に同居させ、作曲に専念できるようにしてやった。三年の後彼の作曲が初めてオペラ・ハウスで上演されマリアがその主役をつとめた。この成功によってルディは花々しく楽壇に乗出し、愛し合っていたマリアとの結婚が近づいた。彼女を以前から愛するライナルトは淋しくそれを見送った。その頃グレテが、分れて以来初めてルディのもとへ逢いに来た。三年前ウィーンへ出発する日、グレテの願いによって、二人はこんな約束をしていた。彼は愛人と結婚する前に必ずグレテに結婚の申込みをすること、そうすれば即座に彼女は拒絶するというのである。「私は彼の申込みを拒絶したのよ」と人に誇りたい無邪気な願いからであった。ルディは約束通り彼女に結婚を申込んだ。通りがかりにそれを聞いたマリアは、二人が本当に愛し合っているものと信じ、悲しみにくれてライナルトを訪れた。彼女はすでにルディの子を宿していたが、彼にさえまだそれを語ってはいなかった。一切を知った上で、ライナルトはマリアを大きな愛情で受入れた。次の夜マリアはルディに結婚の祝いを述べた。ルディは驚いて、それが冗談である事を告げた。マリアの顔は青ざめた。彼女はその日の朝、ライナルトと結婚の式をすましていたのだ。こうして運命の行きちがいから愛する二人は別れ別れの道を辿り、ルディは心の苦しみをグレテに励まされつつ、音楽に魂を打込んだ。そしてグレテは日頃の希み通り舞踊家として成功し、二人は共に世界各地を巡業して至る所で喝采を博した。彼等が世界的な芸術家としてウィーンへ帰ったのは一九二六年であった。ルディは、なつかしい田舎宿を訪れて古いピアノを弾いた。人の気配に顔を上げるとマリアが立つていた。然し彼女は男の子供を連れていた。ルディはそれが自分の子である事に気がついた。二人の胸には昔と同じ愛の炎が今も燃えていた。だが子供の幸せとライナルトの大きな愛を思う時、二人は所詮分れねばならぬ彼等の運命である事を知るのだった。
「わが心は君に」の解説
十年来英国で大当りのアイヴァー・ノヴェロのミュージカル舞台劇を映画化したテクニカラーで一九五〇年作品。「キャラバン」「狂乱の狼火」のデニス・プライスと、フランスから渡ったジゼール・プレヴィルが主演し、「偽れる結婚」と同じくウォーウィック・ウォードが製作、ハロルド・フレンチが演出した。脚色は「笑う姫君」「ワルツ・タイム」のジャック・ウィッテンガムが製作者ウォードと協力して行い、「キャラバン」「情炎の島」のスティーブン・デードが撮影した。音楽指揮は「激情」「ベデリア」のルイス・レヴィである。助演者はこの映画で初めて大役を与えられたパトリシア・デーントン、十年前に舞台で役をつとめたアンソニー・ニコルズ及びオリーヴ・ギルバート、わが国に初めて紹介されるグレイ・ブレーク、古くからの脇役ミュリエル・ジョージ等である。
公開日・キャスト、その他基本情報
キャスト |
監督:ハロルド・フレンチ
出演:デニス・プライス ジゼール・プレヴィル パトリシア・デーントン アンソニー・ニコルズ グレイ・ブレーク ミュリエル・ジョージ オリーヴ・ギルバート Martin Ross Gerald Case ジェレミー・スペンサー |
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配給 | 英国映画協会=NCC |
制作国 | イギリス(1950) |
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