P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2023-11-22
この映画「遥かなる戦場」は、イギリス映画界の"怒れる若者たち”の旗手、トニー・リチャードソン監督が、イギリスの貴族社会の階級制と保守性と醜悪さを、痛烈にえぐった、反戦映画の秀作だ。
同時に、クリミヤ戦争を通して、近東における権益をめぐっての大国間の野望をも暴いている。
1854年から1856年にかけて、ロシア対イギリス、フランス、トルコ連合軍の戦争が、クリミヤ半島で続いた。
ナイチンゲールが活躍したことで知られているが、戦争の悲惨さは、言葉では言い尽くせない。
映画は、だから戦争を描くのだ。
バラクラバの戦闘が行われ、伝令に走った青年将校のデビッド・ヘミングスを銃弾が貫き、白馬から転落した彼の死体のそばを、退却して行く兵士たちに、戦争の虚しさが滲み出ていたと思う。