昼顔(1967) 作品情報

ひるがお

セブリーヌ(C・ドヌーブ)とピエール(J・ソレル)の二人は、仲の良い幸せそのものの若夫婦だ。二人はお互に心から愛しあっていた。セブリーヌもよく夫に仕え、満足な毎日を送っているのだが、彼女が八つの時、野卑な鉛管工に抱きすくめられた異常な感覚が、潜在意識となって妖しい妄想にかられてゆくことがあった。情欲の鬼と化したピエールがセブリーヌを縛りあげ、ムチで責めさいなんだ挙句、犯したり、卑しい男に強姦されるという妄想であった。セブリーヌの奥底に奇妙な亀裂が生まれていることを、ピエールの友人アンリ(M・ピッコリ)だけは、見抜いていた。アンリはなぜか、いつもねばっこい目でセブリーヌをみつめているのだった。セブリーヌはそんなアンリが嫌いだった。ある時、セブリーヌは友人のルネ(M・メリル)から、良家の夫人たちが、夫には内緒で売春をしているという話を聞き、大きな衝撃を受けたが、心に強くひかれるものがあった。テニス・クラブでアンリを見かけたセブリーヌは、さり気なくその女たちのことを話した。アンリもまたさりげなくそういう女たちを歓迎する家を教えた。一時は内心のうずきを抑えたもののセブリーヌは、自分でもわからないまま、そういう女を歓迎する番地の家をたずねるのだった。そして、セブリーヌの二重生活がはじまった。女郎屋の女主人アナイス(G・パージュ)は、セブリーヌに真昼のひととき、つかの間の命を燃やすという意味で「昼顔」という名をつけてくれた。毎日、午後の何時間かを、セブリーヌは行きずりの男に抱かれて過し、夜は今までの通り、やさしく貞淑な妻だった。セブリーヌにはもはや夫を裏切っているという、意識はなかった。体と心に奇妙な均衡が生れ、一日、一日が満ち足りていた。しかし、その均衡が破れる日が来た。セブリーヌに、マルセル(P・クレマンティ)という、金歯だらけの口をした、粗野で無鉄砲で野獣のような男が、すっかり惚れこんでしまったからだ。マルセルは、夫と別れて自分のものになれと、いまは自分の行為を恐しくなったセブリーヌをしつこくおどしつづけ、セブリーヌが言うことを聞かないと知るや、無暴にも、ピエールをそ撃した。ピエールは命を取りとめたが、体の自由がきかず、廃人同様となってしまった。セブリーヌは生ける屍となったピエールを守って生きてゆこうと決心するのだった。二人は前よりも幸せな生活を送ることになった。そして、セブリーヌの身内にはあの変な、いまわしい妄想が、永遠に遠去かって行くのがわかった。

「昼顔(1967)」の解説

南米アルゼンチン生れのフランス作家ジョゼフ・ケッセルの同名小説の映画化で、「小間使の日記」のルイス・ブニュエルとジャン・クロード・カリエールが共同で脚色、ルイス・ブニュエルが監督した文芸もの。撮影はサッシャ・ヴィエルニー。音楽は使わず自然音だけで効果を狙っている。出演者には、「ロシュフォールの恋人たち」のカトリーヌ・ドヌーヴ、「輪舞」のジャン・ソレル、「恋愛論」のミシェル・ピッコリ、「タヒチの男」のジュヌヴィエーヴ・パージュ、「恋人のいる時間」のマーシャ・メリル、「凶悪犯」のピエール・クレマンティなど。

公開日・キャスト、その他基本情報

キャスト 監督ルイス・ブニュエル
原作ジョゼフ・ケッセル
出演カトリーヌ・ドヌーヴ ジャン・ソレル ミシェル・ピッコリ ジュヌヴィエーヴ・パージュ ピエール・クレマンティ フランシスコ・ラバル マーシャ・メリル
配給 東和
制作国 フランス(1967)
上映時間 100分

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ユーザーレビュー

総合評価:5点★★★★★、4件の投稿があります。

P.N.「pinewood」さんからの投稿

評価
★★★★★
投稿日
2022-02-22

他の映画情報を参照すると彼のアルフレッド・ヒッチコック監督が本篇を賞賛した旨が…。また凡庸な原作にフロイト的解釈を施した云々とも~。ラストシーンの戸惑いを含め,娼館をさりげなくヒロインに紹介したしたミッシェル・ピコリの,残酷な友情も印象深い。何れにせよシュルレアリスト詩人,ルイス・ブニュエル監督ワールド満開の作品だった

最終更新日:2024-11-06 17:05:41

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