P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-21
※このクチコミはネタバレを含みます。 [クリックで本文表示]
インドのある片田舎の貧しい一家の暮らしぶりを淡々と描いた、サタジット・レイ監督の「大地のうた」は、見事に結晶した”いのちの詩”とも言える素晴らしい作品です。
インドという異郷の風俗に目を見張りつつも、全く自分たちと変わらない人間の生き方を発見して、ある種の懐かしささえ感じてしまいます。
夢ばかり追って、生活力のない父、生活苦にイライラしながらも、家族への愛を失わない母、ブツブツ文句ばかり言っているお婆さん。
一方、幼い少年オプと、姉のドガは、大自然の中を飛び回ります。そんなある日、お婆さんが、老木が朽ち果てるように死んでいきます。それはまるで、大自然の中の当然の出来事のように、一つの命の終わりを描き、自然の非情さを表出します。
だがそれは、決して残酷な感じはありません。しかし、姉のドガの急な死は、そのあまりの若さ故に、人生の途中で断ち切られてしまったという感があり、死の無残さと、家族の悲しみが胸に迫ってきます。
人間と自然、そして命のかけがえのなさを描いて、この作品は素晴らしい普遍性を獲得したのだと思います。