P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-05-14
イタリア・ネオレアリズモは、1950年代に全盛期を迎え、「自転車泥棒」や「靴みがき」などの秀作を生み出してきた。
質素な暮らしを営む市井の人々が、過酷な現実に翻弄されるという基本構図。
素人俳優を大胆に起用し、暴力やロマンスといった劇的要素を抑え、ドキュメンタリーの技を積極的に採用する。
この映画作法が最も生きたのが、ヴィットリオ・デ・シーカ監督の「ウンベルトD」だと思う。
ウンベルトに扮したカルロ・バッティスティは、"なけなしの品位"を見事に醸し出しているし、監督のヴィットリオ・デ・シーカも感傷を抑えた細部描写で、"主人公の実情"を観る者に伝達する。
部屋の壁を這いまわる蟻の群れ、親切だが愚かなメイド、金を取って犬を預かる強欲な夫婦。
ウンベルトの情感は、時代と世相を反映した、細部の周囲から鮮明に立ち上がってくる。