河は呼んでる 作品情報
かわはよんでる
アルプス山麓のオート・ザルプ県、ユバイという村で、ある百姓が死に、ただ一人の相続人、娘のオルタンス(パスカル・オードレ)が残った。村の近くを流れるデュランス河に、大々的な水力発電ダム工事が行われており、近辺の村はいずれ水底に没する運命にあり、巨大な機械の活動や、入りこんでくる人々の動きは、日々にのどかな山村の総てを変えつつあった。オルタンスの亡き父は、やがて沈む土地を多く所有していた。彼は死んだ時、三千万フランという賠償金を既に受けとっている筈だった。未成年のオルタンスが、成人に達して財産を自由にすることの出来る日がくるまで、彼女の叔父や、叔母や、従兄妹たちは、後見という名目で彼女の許に集まってきた。しかし、亡き父は一体大金を何処にしまったのか、それはオルタンスでさえもが知らない。公証人は、オルタンスが一カ月づつ親戚の家をめぐって、生活するようにきめた。アスパラガス造りのカバイヨンの叔父と叔母は、息子と彼女を結婚させようとした。貧しい葡萄作りのロシュブリーヌ叔父と妻、その娘は、富裕な彼女をねたんで、息子をそそのかして暴力で彼女を征服させようとした。エホバ教信者のメランドール叔父夫婦は、自分達の宗教をおしつけて、彼女を利用しようとした。シヤトー・アルヌーの肉屋の従兄は、人のよい夢想家で彼女と仲よくなったが、妻君がそれを邪推した。そんな時、彼女が心からとびこんでいけるのは、親類のなかの除け者で、夏は羊飼いをし、冬は密猟をやって、一人自然の中に暮しているシモン叔父(シャルル・ブラヴェット)のところだった。彼女の不在中、亡き父の家を何回となく家探ししても、どうしても三千万フランの隠し場所を見つけることの出来ぬ親族たちは、シモン叔父の所からオルタンスを官憲の力でつれもどした。彼女は、父の遺した家に一人で暮すことになった。そして、思いもかけぬ屋根裏の、昔のおもちゃの箱の中に、父の遺産を発見したのである。大金を持った彼女は、テレビを買い、衣裳を作り、自分の生活を設計した。しかし、ロシュブリーヌの一家がそれに気づいた。従姉の発案で、貧しい叔父一家はオルタンスを監禁し、彼女にお金のある場所を白状させようとした。そして、口を破らぬ彼女を、間もなく湖底に沈もうとする父の遺した家の地下室に閉じこめた。それでも、オルタンスは黙っていた。ダム工事は進行し、ユバイの村に人のいなくなる時がきた。地下室で一人閉された日々を送るオルタンスを残して……。ダムに貯水の始められた日、それはオルタンスが成人を迎える日だった。古い村の、家や石垣や、岡を水はひたひたと呑みこんでいった。しかし、オルタンスは負けはしなかった。水の流れが押し破った壁から、彼女は地下室を出た。公証人を囲んだ親類たちの前で、彼女は、ロシュブリーヌ一家が運んでおいたテレビ・セットの中から、三千万フランをとり出してみせた。もうオルタンスは大人だった。親戚の人々がした総てのことも、もう過去のことだ。三千万フランをスクーターのうしろにつけて、オルタンスは、一人で山の叔父シモンのもとに向った。
「河は呼んでる」の解説
アルプスからプロヴァンスに流れるデュランス河のダム建設工事を背景として、山村の少女の成長を描くこの作品は、ダム工事の進行とともに三年間の日数を費して製作された。監督は、兄ジャン・ピエール・オーモンを主演に「マルセイユの一夜」を作って以来のフランソワ・ヴィリエ。バロンセリ、モーリス・クロシュ、レオニード・モギイ等の助監を経て、短篇映画や記録映画を作った経歴をもつ人である。同地方を背景とした作品の多い地方主義作家ジャン・ジオノのオリジナル・シナリオをアラン・アリュウが脚色し、ジオノ自身が台詞を書き、撮影監督はポール・スリニャック。ギターによる主題曲をつけた音楽は、ミュージック・ホール出身の若い歌手ギイ・ベアール。主演するのは、この作品に出るまで無名の存在で、撮影中舞台の「アンネの日記」の主役に選ばれたり、「眼には眼を」に出演したりしたパスカル・オードレ。その他「七つの大罪」ロッセリーニ編に出たアンドレ・ドバールや、シャルル・ブラヴェット、モンコルビエ、アンリ・アリュ、ユベール・ド・ラッパラン、パニッス、ミリー・マチス等が出演する。
公開日・キャスト、その他基本情報
キャスト |
監督:フランソワ・ヴィリエ
出演:パスカル・オードレ シャルル・ブラヴェット モンコルビエ ジェルメーヌ・ケルジャン アンドレ・ドバール Robert Lombard アンリ・アリュ ミリー・マチス Maurice Sarfati ユベール・ド・ラッパラン Helene Gerber パニッス Madeleine Silvain |
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配給 | 新外映 |
制作国 | フランス(1958) |
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