嘆きのテレーズ 感想・レビュー 3件
なげきのてれーず
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P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- なし
- 投稿日
- 2024-06-14
初めて燃えあがった炎を消すまいと、彼女は夫に離婚を迫るが聞き入れられず、パリの親戚に預けられることになる。
その途中、夫は、後を追ってきてローランと争い、列車から転落死する。
そのショックで姑は、半身不随となりローランとの仲も冷たくなってしまう。
燃えあがった炎は、再びしぼんでいく。
だが、ローランを愛したということで、テレーズにはそれなりの幸福感も残っただろうに、列車で同室だった男のゆすりという思いがけない事態が発生し、かぼそい炎は大きくゆらぎ、そしてさらに、映画にとっては実に素晴らしいが、テレーズにとっては、まことに悲痛な幕切れとなるのだった。
暗く、重く、陰惨な環境にあったがゆえに、いっそう青白く、鬼火のように燃えたテレーズの”女の情念の炎”を、マルセル・カルネ監督はリアリストの本領をいかんなく発揮して的確に描写してゆく。
一点たりともゆるがせにはしていない”緊迫と緊張の映像世界”に、ただただ魅せられてしまった傑作中の傑作だ。
P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2024-06-14
暗闇の中で、青白い炎が妖しく燃えている。
マルセル・カルネ監督の「嘆きのテレーズ」は、そんな映画だ。
炎はヒロイン、テレーズの女の情念。決して赤々と燃えあがることはない。
病弱の夫と、その夫をまるで赤子のようにいたわり、可愛がる老いた姑にはさまれ、テレーズの日々は、暗い。
その中でも情念の炎は、チロチロと燃えていた。
貧弱な夫とは比べものにならない頑強で逞しい肉体を持ったローランの出現で、炎は勢いを得た。
おそらくは、生まれて初めての燃えあがりだったのだろう。
だが、テレーズはそれを赤く燃えあがらせることはできない。
彼女は、それほどに幸せに恵まれていなかったのだ。
逞しい男の腕に抱かれ、官能に酔いながらも暗く無表情なシモーヌ・シニョレの顏がそのことを物語っている。
そして、炎の燃えあがりが、やがて不幸へと結びついてゆくだろうことも、無表情さは語っている。