失われた地平線(1972) 作品情報
うしなわれたちへいせん
東南アジアのある国で革命が起きた。外国人たちは国外脱出を計り、それを指揮しているのはイギリス大使のリチャード・コンウェイ(P・フィンチ)だった。彼は手際よく外国人を飛行機で送りだし、残りはコンウェイを含む五人だけだった。最後の飛行機がやって来て五人はゲリラの攻撃の中ようやく脱出に成功した。五人の乗客は、コンウェイ、その弟でロンドン・タイムズの記者ジョージ(M・ヨーク)ニューズ・ウィークのカメラマン、サリー(S・ケラーマン)アメリカ人牧師サム(G・ケネディ)そしてコメディアンのハリー(B・バン)であった。飛行機の中で一夜を明かした一行は翌朝妙な事に気がいた。目的のホンコンは東にある筈なのだが機は西に向かっている。不信に思ったコンウェイが繰縦席の扉をたたくと、窓越しに顔を見せたのは全く知らない男だった。男は五人に銃を向け、機首をヒマラヤに向けた。やがて雪山にさしかかった時、エンジンが故障を起こし、機は雪におおわれた狭い斜面に不時着した。五人は無事だったが、飛行士は死んだ。その夜、五人は毛皮で身を固めた一隊にであい、とりあえず彼らの国をめざして出発することにした。チャン(J・ギルガット)という僧侶に率いられ、苦しい旅を続けたが、トンネルを越えると別世界が現われた。そこには草花が咲き乱れ、雪の世界のまっただ中にあるとは信じられない温暖な世界がひろがっていた。五人は巨大なラマ廟の寺院に案内され、接待役のラマ僧(J・繁田)に暖かくもてなされた。その上、夕食の席では美しい舞姫マリア(O・ハッシー)のすばらしい歌と踊りを堪能した。一行はこれまでの苦しみをたちまち忘れ、なかでもジョージは一眼見たとたんマリアを好きになってしまった。ここはシャングリラという国だった。電気もなければ電話もない。現代の機械文明とは全くかけ離れていた。人口は二千人、総ての人が長寿を保ち笑顔で生活している。さらに病気を知らず、生活態度は総てに対して中庸を守っていた。翌日から五人はこの国の風物を楽しむ事になった。コンウェイは小学校を見物に行きそこの美しい教師キャサリン(L・ウルマン)の楽しげな様子にすっかり魅せられてしまった。サリーもサムもすっかりこの国が気に入っていた。ハリーも売れない芸人だったが、この国ではたちまち子供たちの人気者になってしまった。唯一人ジョージだけがなじめず、すでに恋人同志になっていたマリアを連れて自分の国に帰りたがった。そしてついに脱出を決意したが、その時、チャンがやってきてシャングリラの領主ハイ・ラマ(C・ボワイエ)の所へ案内した。ハイ・ラマはこの国の事を静かに語り始めた。一七四七年、ベルギーのペロー神父がヒマラヤにやってきたが、凍傷にかかり片足を切断。その後にシャングリラにやってきた。ここでペロー神父は宗教の真髄を教え、ラマ廟の建設にとりかかった。住民の手をかり廟が完成した時、神父は一〇八歳になっていた。肉体は急速に衰え、生死の境をさまよったが、シャングリラの目的を悟ると奇跡的に回復した。コンウェイはふとハイ・ラマの足元を見た。片足だった。彼こそペロー神父その人なのだ。シャングリラの目的は、戦争と狂気が互いを滅ぼした後の世界を導くことだった。権力も科学も平和をもたらすことができないと知った人々を、シャングリラの中庸の文化で指導していくのだ。そのリーダーとしてコンウェイを誘拐という手段で迎えたのだった。またコンウェイはチャンから不思議な話を聞かされた。マリアは二十歳の時、嫁入りのためにここを通ったが道に迷い、住みつくようになった。それからもう八十年もたっている。ジョージが彼女を連れてこの国から出れば、たちまち老人になり、死ぬだろう、というのだ。キャサリンも同じような運命だった。だがジョージは全く信用しなかった。数日後、ハイ・ラマが死亡した。葬儀の日、ジョージはマリアを連れ、コンウェイと共にこの国から脱出した。外はものすごい猛吹雪だった。たちまちマリアは歩けなくなった。ジョージははっとした。あの美しいマリアの顔がみるみるしわだらけになった。そして息絶えた。ジョージは愛する者を失った悲しみで気が狂い、谷底に身を投げた。数日後、一人の男がシャングリラめざして雪山を登っていた。シャングリラに、キャサリンの愛と心の平和を発見したコンウェイその人だった。
「失われた地平線(1972)」の解説
現代の騒々しい機械文明とかけ離れた不老長生の国シャングリラを舞台に、生きる歓びをうたいあげるミュージカル。製作はロス・ハンター、監督は「クイーン・メリー/愛と悲しみの生涯」のチャールズ・ジャロット。ジェームズ・ヒルトンの原作をラリー・クレイマーが脚色、撮影はロバート・サーティーズ、作曲はバート・バカラック、作詞はハル・デビッド、編集はモーリー・ワイントローブが各々担当、出演はピーター・フィンチ、リヴ・ウルマン、サリー・ケラーマン、オリヴィア・ハッセー、ジョージ・ケネディ、マイケル・ヨーク、ボビー・バン、ジェームズ・繁田、ジョン・ギールグッド、シャルル・ボワイエなど。日本語版監修は高瀬鎮夫。テクニカラー、パナビジョン・70ミリ。
公開日・キャスト、その他基本情報
公開日 | 1973年7月7日 |
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キャスト |
監督:チャールズ・ジャロット
原作:ジェームズ・ヒルトン 出演:ピーター・フィンチ リヴ・ウルマン サリー・ケラーマン ジョージ・ケネディ マイケル・ヨーク オリヴィア・ハッセー ボビー・バン ジェームズ・繁田 ジョン・ギールグッド シャルル・ボワイエ |
配給 | コロムビア |
制作国 | イギリス(1972) |
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