P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- なし
- 投稿日
- 2024-07-03
※このクチコミはネタバレを含みます。 [クリックで本文表示]
原作は、フランスの貧民作家シャルル・ルイ・フィリップの「モンパルナスのビュビュ」で、むろん小説の舞台はパリだが、映画はこれをイタリアのミラノの下町にロケしながら、ロートレックの画調を思わせる、その不思議な美しさがある。
まだ、あどけなさを残すヒロインが、疲れて荒んで、いっぱしの娼婦に成り果てていく姿が痛ましいが、そんな彼女は、田舎出の純朴な青年ピエロ(マッシモ・ライエリ)に恋される。
だが貧しく無力なピエロには、ベルタを救うことができない。
姉の発狂、父の窮死、幼い弟妹たち。どうしようもない、この貧しさ。
だが、貧しさをもたらす社会の仕組みに気付きさえしない女の哀れ。
彼女を見殺しにした男への悔恨を込めて、けれど、あまりにも慎ましく優しい女心が、郷愁をうずかせる佳作だと思います。