あの愛をふたたび 感想・レビュー 1件

あのあいをふたたび

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P.N.「オーウェン」さんからの投稿

評価
★★★★
投稿日
2024-05-19

クロード・ルルーシュ監督の「あの愛をふたたび」は、前作の「愛と死」で、かなり無理をしたルルーシュが「男と女」や「パリのめぐり逢い」の系列へ戻った作品だ。

アメリカへロケに来たフランスの女優アニー・ジラルドと作曲家のジャン=ポール・ベルモンドが結ばれ、西部各地で愛の観光旅行を楽しむが、それぞれ夫や妻や子供がいるので、絶えず隙間風が吹き込む。

フランスへ帰ったアニーは、夫と別れる決心をして、ベルモンドに会いに、約束の空港へ行くが、彼は現れない、というお話を、ルルーシュは技巧たっぷりに切なくも楽しく描いてみせる。

現実の場面かと思えば、撮影中の場面だったなどという、トリッキーな演出を数多く取り入れ、色彩の画調は快く、ラスベガスからトゥーソンで、ガン・ファイト・ショーを見物。

ジョン・フォード監督の西部劇でお馴染みの、モニュメント・ヴァレーでは、インディアンの大群に追われる愉快な空想をまじえて、例の雄大な岩山の風景の中を白い車が颯爽と走るのが美しい。

こんな風にテクニックを駆使して、巧く作った映画は私の大好物で、だんぜん嬉しくなりましたね。 とにかく、アメリカ・ロケを最も賢明に生かした作品になっていると思う。 また、恋愛映画の観点から観ても、見どころ十分で、恋愛旅行を続けているのに、二人とも絶えず夫と妻に長距離電話を取り続けるんですね。 大人の感覚の浮気と言ってしまえば、それまでだが、その浮気でなくなったアニーが、万が一を期待して空港へ行き、ベルモンドが乗ってくる筈の旅客機が着くまで、ソワソワと落ち着かず、彼がとうとう降りてこないのを見て、自嘲的な苦笑を浮かべ、その苦笑が涙寸前の表情に変わるまでのクローズアップでFINというラストなど、ペーソス豊かに女心を描いていて、そこにルルーシュの盟友である、フランシス・レイの心の琴線を震わすリリカルな音楽が流れてきて、実に抒情溢れるシーンになっていたと思う。

最終更新日:2024-05-29 16:00:01

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