P.N.「私は弧を描き、私弧を奏でる。」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2022-10-12
孤独を好む、老教授の終活的な作品。
住まいだけで繰り広げられる間近で鑑賞する舞台劇。
人間は、おかしなもので、必ず自らが避けてきた物事と対面する。
人間は、孤であり、しかしなんらかの円上の(縁)弧を歩んでいる。
誰しもが、孤で生まれ孤で死んで行く。
けれど、人生は、円上の、弧なのだ。
独りで歩いて行かなければならないが、人間と関わらず生きても行けない。
矛盾するようだが、自らの弧を描き、弧を奏でながら生きないと行けない。
老教授が、自らの問題と対峙することで穏やかに終焉を迎えたように。
少し舞台劇のような展開で畳み掛ける最期は、強引にも思えるが、こう言う作風もヴィスコンティ風と解釈したい。
作品全体は、時代背景と共に、左翼・右翼が世の中でどう働き、中道抜きに人生は進まない人間模様を巧みに織り込み仕組みを読み解くことができる。
ヴィスコンティの魅力は、生き方で若者に道を示しながらも決してお説教じみたりしない。
ローマの偉人、日本の偉人よろしく、継承・教え・学びのトライアングルの構図が見事に構築されている。