恐るべき子供たち(1949) 作品情報
おそるべきこどもたち
その晩は、雪だった。シテ・モンチエの、コンドセ高等中学校の中庭を、走り、叫びあい、雪球を投げあう少年たちのシルエットが飛びかう。ポール(エドゥアール・デルミ)は死にそうな思いで、憧れのダルジュロス(ルネ・コジマ)を探していた。ところがポールは、ダルジュロスの姿をかいまみた途端に彼が投げた石の入った雪球で胸を射ちぬかれ、気絶してしまう。それが奇蹟の、そしてこの悲劇のはじまりであった。ポールの姉エリザベート(ニコール・ステファーヌ)は、負傷して帰ってきた弟と、つきそってきた友人ジェラール(ジャック・ベルナール)を家に迎えいれることを耐えがたく思った。瀕死の母の看病とそのうえ、弟まで病人になってはたまらないということよりも、姉と弟の居室、二人だけの王国に、弟がたかだか親友と名のるだけの他人に侵入することを許したことが腹立たしいのだ……。エリザベートは生きる上で奇蹟は常に起こると信じていた。母(マリア・シリアキュス)の侍医がボールを診察して、通学を禁じて療養を命じたことも、ジェラールの伯父がポールとエリザベートとジェラールの三人を海辺の旅行に招いてくれたことも、彼女にとっては奇蹟のひとつだった。やがてポールの健康は回復したが、例の雪合戦事件のせいでダルジュロスが放校されたという知らせを聞いて、彼の心は痛んだ。母が死んだのはそれから間もなくのことだった。エリザベートはファッション・モデルとして働き始めた。彼女は仲良くなったモデル仲間のアガート(ルネ・コジマ)をちょくちょく家に連れてくるようになった。アガートは誰の眼にも、ダルジュロスに酷似した少女だった。ポールはアガートを愛し始めていることをひた隠しに隠して、彼女を無理に遠ざけた。殊に、いかにしてエリザベートにさとられずにすむかに腐心した。それでも秘そかにアガートに愛を伝えたいと思うようになった。こうして悲劇は徐々に忍び寄っていた。やがてエリザベートは、金持ちのアメリカ人マイケル(メルヴィル・マルタン)と結婚するが、マイケルは謎の自動車事故死を遂げた。それ以来、エリザベートはますますポールに固執するようになっていった。ある夜、ポールはアガートに対する愛情をおさえることが出きず、手紙を書いた。“あなたがもし私を嫌いならば、自分は死ぬ以外にない……”。不運にも、その手紙はエリザベートの手に渡ってしまった。ついに悲劇の幕は切って落とされたのだ。エリザベートはポールに、「アガートはお前など愛していない、やがてジェラールと結婚するだろう」と言い、ポールへの愛に懊悩するアガートにはジェラールと結婚するべきだと説得した。そうしてアガートとジェラールは結婚した。偶然、ジェラールは新婚旅行の旅先でダルジュロスに会ったという。そのとき託されたダルジュロスの“毒薬”をポールに手渡した。それは少年時代、ポールがダルジュロスにあげた“宝物”だった。エリザベートは、ポールが今、その“宝物”を飲みほして、自分も死ぬことだけが二人の奇蹟の完結なのだと信じた。エリザベートの予想どおり、やがてポールはその“毒薬”を飲み込んだ。最後のポールの手紙を受けとったアガートは大急ぎでエリザベート邸にかけつけた。しかしすでに手のほどこしようがなかった。そしてアガートは最後に、ポールの自分に対する深い愛を知ったのだ。エリザベートは、ポールの死を確認すると、自らの胸に銃口をむけた。
「恐るべき子供たち(1949)」の解説
詩人ジャン・コクトーの代表作を、「海の沈黙」でデビューして既成のフランス映画界に衝撃をあたえたジャン・ピエール・メルヴィルが映画化しヌーヴェル・ヴァーグの先駆的役割を果たした作品。製作・監督はジャン・ピエール・メルヴィル、原作・台詞はジャン・コクトー、脚色はメルヴィルとコクトー、撮影はアンリ・ドカエ、音楽監修はポール・ボノー、編集はモニーク・ボノーが各々担当。出演はニコール・ステファーヌ、エドゥアール・デルミ、ルネ・コジマ、ジャック・ベルナール、メルヴィル・マルタン、マリア・シリアキュス、ジャン・マリ・ロバンほかで、ナレーションはコクトー自身が担当している。
公開日・キャスト、その他基本情報
公開日 | 1976年8月14日 |
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キャスト |
監督:ジャン・ピエール・メルヴィル
原作:ジャン・コクトー 出演:ニコール・ステファーヌ エドゥアール・デルミ ルネ・コジマ ジャック・ベルナール メルヴィル・マルタン マリア・シリアキュス |
配給 | フランス映画社 |
制作国 | フランス(1949) |
上映時間 | 100分 |
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ユーザーレビュー
総合評価:5点★★★★★、3件の投稿があります。
P.N.「pinewood」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★★
- 投稿日
- 2022-06-08
本篇で発揮された息詰まる室内劇の緊張感はジャン=ピエール・メルヴィル監督のちょいとコミカルな名篇〈賭博師ボブ〉でも感じられるんだ