哀しみの伯爵夫人 作品情報
かなしみのはくしゃくふじん
一九〇二年四月七日。古都ボローニャと水の都ヴェニスを舞台に起こった一つの事件--世間の不健全な好奇心の的となったこの事件は、中世紀以来の歴史と伝統とを誇るボローニャ大学で医学を講じる教授ムウリ(フェルナンド・レイ)の息子である弁護士ツリオ・ムウリ(ジャンカルロ・ジャンニーニ)と、その妹リンダ・ムウリ(カトリーヌ・ドヌーヴ)の二人を中心に起こった。リンダとその夫で伯爵フランチェスコ・ボンマルティーニ(パオロ・ボナチェリ)は、二年間の別居の後、再び同じ屋敷に住むことになった。しかし、この別居解消はあくまでも形式的なもので、彼女は同じ屋敷内であるとはいえ、夫とは別の館に住み、しかも、夫は妻の招待なしには妻の住む館に足をふみ入れることは出来なかった。リンダが夫と再び同じ屋敷内に住むことを決心したのは、二人の子供と離れては暮らせないというためだったのだが、夫は子供たちを彼女から切離し、寄宿舎に入れようとしていた。リンダにとって唯一の心の支えは兄のツリオだった。久しぶりに兄妹は再会し、ツリオはリンダの苦衷をあわれんだ。ツリオは召使いのローザ(ティナ・オーモン)を愛人にしていたが、妹への愛の前にはローザへの愛など問題外だった。ツリオは妹を夫から守るために伯爵を殺害する決心をする。医師のセツキ(E・マニ)から受け取った毒薬は、アマゾンの原住民だけが作れるもので、卒中で倒れたとしかとれないという。意を決したツリオは友人のピオ・ナルディ(C・バニ)を訪ね、伯爵殺しを依頼した。借金で首の廻らないナルディは、借金を肩がわりしてもらえる上に三千リラという報酬の前にことわりきれなかった。伯爵がボローニャに借りている部屋と隣り合わせの部屋に、ローザの手引きによってナルディを忍び込ませたツリオは、伯爵が連れ込んだ娼婦が男を手引きして伯爵を殺し、宝石類を持って逃げたと警察に信じ込ませるために室内を荒らし伯爵の帰りを待とうとするが、怖気づいたナルディは逃げ出そうとする。ツリオはナルディを殴りつけるが、この計画の不可能を悟り、自分一人で伯爵を殺害すべくドアの内側で短剣を構えて伯爵の帰りを待ちうけた。朝早く帰ってきた伯爵はツリオの短剣を胸に受け、絶命した。数日後、管理人の手によって死体が発見された。検事のスタンザーニ(マルセル・ボズフィ)が捜査を開始した。彼はツリオが一つの仮定として、伯爵が娼婦を連れ込みその手引きによって侵入してきた情夫が伯爵を殺害したのではないかという説を興味深そうに聞いていたが、その説に同意するようなそぶりは見せなかった。ローザが逮捕された。スタンザーニは、伯爵が殺された屋部の隣りの部屋はリンダの持ち物であったこと、家賃はリンダが払い、ローザがその家賃を届けたことを明らかにしていった。新聞は一面に彼女が逮捕されたこと、なかでもカソリック系の新聞は、社会主義者であり選挙に打って出ようとしていたツリオと、その父であり名門ムウリ家を代表するムウリ教授を攻撃することにやっきになっていた。ムウリはチューリッヒにいるリンダを訪ね、娘から伯爵を殺したのは兄のツリオであることを告げられた。ムウリの眼から涙があふれた。彼はスターンザーニを訪れ、伯爵を殺したのは息子のツリオであることを告げた。ボローニャを遠く離れていたツリオに、自首を勧める父からの電報が届いた。ナルディに続いてリンダが逮捕されたことを聞いたたツリオは、妹を救う者は自分をおいて他にないと思い警察に出頭、伯爵殺しは正当防衛であり罪は自分一人にあると主張したが、スタンザーニはリンダとツリオの共謀であり、しかも計画の仕上げをしたのは父のムウリであると、彼の釈明を聞き入れなかった。リンダの陳述はツオリとは食い違い兄は自分を誤解していたのであり、自分には責任のないことだといった。公判が開かれ、やがて裁判長が被告に発言を許可すると、ツリオは、自分は妹のためなら命を捨てるだろうこと、妹を救うためには殺人を犯すしか道がなかったことを涙ながらに語った。リンダは、自分の子供の命に賭けても無実であることを誓った。判決が下った。リンダに対して有罪がいい渡された瞬間、ツリオが妹の無実を叫び、床に倒れた。ツリオの名を呼びながら駆け寄ったのはローザだった。ツリオ・ムウリ、予謀殺人罪により30年の禁固重労働。リンダ・ムウリ、夫殺害を数人に示唆した罪により10年の禁固重労働。カルロ・セツキ、10年の懲役、ローザ・ボネッティ、7年の懲役、ピオ・ナルディ、共同正犯による罪により30年の禁固労働。そして数日後、「ムウリ教授、重態の王女の手術を執刀し、王女を救う!王はムウリの娘を特赦!」と叫ぶ号外売の声がひびいた。
「哀しみの伯爵夫人」の解説
今世紀初頭、ヴェニスで実際に起こったスキャンダラスな殺人事件の裏に隠された兄妹の愛を描く。製作はレイモン・ダノン、監督は「愛すれど哀しく」のマウロ・ボロニーニ、脚本はセルジオ・バッジーニ、撮影はエンニオ・グァルニエリ、音楽はエンリオ・モリコーネ、衣裳はカブリエラ・ペスキュッチが各々担当。出演はカトリーヌ・ドヌーヴ、ジャンカルロ・ジャンニーニ、フェルナンド・レイ、ティナ・オーモン、パオロ・ボナチェリ、マルセル・ボズフィなど。
公開日・キャスト、その他基本情報
公開日 | 1976年3月27日 |
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キャスト |
監督:マウロ・ボロニーニ
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ ジャンカルロ・ジャンニーニ フェルナンド・レイ ティナ・オーモン パオロ・ボナチェリ マルセル・ボズフィ |
配給 | 20世紀フォックス |
制作国 | フランス イタリア(1974) |
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