終電車 作品情報
しゅうでんしゃ
第二次大戦中、ナチ占領下のパリ。人々は夜間外出を禁止され、地下鉄の終電車に殺到する。この混乱の時代は、しかし映画館や劇場には活況を与えていた。そんな劇場の一つモンマルトル劇場の支配人であり演出家のルカ・シュタイナー(ハインツ・ベネント)は、ユダヤ人であるため、南米に逃亡し劇場の経営を妻であり看板女優のマリオン(カトリーヌ・ドヌーヴ)にまかせていた。彼女は、今、ルカが翻訳したノルウェーの戯曲『消えた女』を俳優のジャン・ルー(ジャン・ポワレ)の演出で上演しようとしていた。相手役には新人のベルナール・グランジェ(ジェラール・ドパルデュー)が起用された。ジャン・ルーは、この戯曲の上演許可のため、ドイツ軍の御用批評家ダクシア(ジャン・ルイ・リシャール)とも親しくしているというやり手である。連日稽古が続けられるが、稽古が終ると、ベルナールはカフェで数人の若者たちと会って何か相談し合っており、一方マリオンは暗闇の劇場に戻って地下へ降りていく。地下室には、何と、南米に逃げたはずのルカが隠れていたのだ。夜マリオンが会いに来るのを待ちうけ、昼は、上で行なわれている舞台劇の様子を通風孔の管を使って聞き、やってくるマリオンにアドバイスを与えた。つまり、彼は地下にいながら、実質的な演出者だったのだ。初演の日、『消えた女』は、大好評のうちに幕をとじるが、ルカは満足しなかった。そして、翌日の新聞でダクシアは酷評を書いた。マリオンは、舞台の稽古をしながら、いつしかベルナールに惹かれている自分を感じていたが、あるレストランで彼がダクシアに酷評の謝罪を迫ったことで彼に怒りをおぼえた。『消えた女』は好評を続けるが、ベルナールがレジスタに参加するために劇場を去ることになったある日、初めて会ったルカから「妻は君を愛している」と言われ動揺するベルナール。そしていよいよ彼が去る日、二人ははじめて結ばれた。連合軍がノルマンディーに上陸し、パリ解放も目前に近づいた。ルカは屋外に出ることが実現し、ダクシアは国外に逃亡する。そして、マリオンは、愛する夫の演出で、愛する若手俳優ベルナールと共演し、艶やかな笑顔で観客に応えているのだった。
「終電車」の解説
ナチ占領下の混乱のパリを舞台に劇場を守る一人の女優の愛を描く。製作・監督は「緑色の部屋」のフランソワ・トリュフォー、脚本はトリュフォーとシュザンヌ・シフマン、台詞はトリュフォー、シフマンとジャン・クロード・グランベルグ、撮影はネストール・アルメンドロス、音楽はジョルジュ・ドルリュー、編集はマルティーヌ・バラーク、マリー・エーメ・デブリルとジャン・フランソワ・ジル、美術はジャン・ピエール・コユ・スヴェルコが各々担当。出演はカトリーヌ・ドヌーヴ、ジェラール・ドパルデュー、ジャン・ポワレ、ハインツ・ベネント、アンドレア・フェレオル、サビーヌ・オードパン、ジャン・ルイ・リシャール、モーリス・リッシュなど。
公開日・キャスト、その他基本情報
公開日 | 1982年4月10日 |
---|---|
キャスト |
監督:フランソワ・トリュフォー
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ ジェラール・ドパルデュー ジャン・ポワレ ハインツ・ベネント アンドレア・フェレオル サビーヌ・オードパン ジャン・ルイ・リシャール モーリス・リッシュ |
配給 | 東宝東和 |
制作国 | フランス(1981) |
上映時間 | 132分 |
動画配信で映画を観よう! [PR]
ユーザーレビュー
総合評価:4.8点★★★★☆、6件の投稿があります。
P.N.「オーウェン」さんからの投稿
- 評価
- ★★★★☆
- 投稿日
- 2023-11-20
フランソワ・トリュフォー監督の「終電車」は、カトリーヌ・ドヌーヴの熟れた魅力が、全面開花した作品で、彼女の美しさがこの映画を支配している。
舞台女優という役もよく似合って、トリュフォーの映画にしては、異例な程、大人の官能に満ちている。
「突然炎のごとく」のような複雑な三角関係が描かれるのだが、大人の演技が出来る三人の俳優が組んでいるので、リアリティが感じられるのが、とてもいい。
舞台での恋人同士が、現実でも惹かれあい、この二人は実は地下の男に演出されているという、現実と芝居が交錯する二重三重のトリックが、実に面白い。
とりわけ、この三角関係の結末を演じるシーンが、実は舞台の上だったというオチに至っては、え?という感じなのだ。
トリュフォーは、いつもながらの映画のスタイルや技法を弄びすぎるきらいはあるものの、やはりフランス映画きっての技巧派である事を、この映画でも証明している